研究開発〜イノベーションストーリー〜

Innovation Story [Beauty♯06] 化粧品研究所 小鷹 晶

化粧水なのに「水」を配合しない独自の発想

2016年11月時点

化粧品開発と健康食品開発の融合

 ファンケルでは長年化粧品と健康食品の研究開発を行ってまいりました。様々な素材を扱う中で、化粧品あるいは健康食品に活かせるような素材がいくつかあり、この度、独自の製造方法で栄養素を高めた発芽米の有効性を活かし※1、特殊な酵母で発芽米を発酵させた「発芽米発酵液」を化粧品原料として開発しました。

特殊な酵母「サッカロミセス・ベローナ」

 開発には、発芽米の栄養素の効果が最大限に引き出せる発酵技術を用いました。発酵とは、微生物の働きによって物質を変化させ、生物に対して有用に作用させることをいいます。一般的な発酵食品としては、納豆やヨーグルト、パン、飲料としては日本酒やワインなどがあげられます。

 また、発酵させる微生物として酵母や乳酸菌が有名ですが、一般的な酵母を用いると通常はアルコールを産生するため、肌に塗布した際に刺激などを生じることがあります。

 そこで、数千種の酵母を検討した結果、アルコールを産生せず、次の章で述べる有用な成分を引き出す特殊な働きを持つ酵母「サッカロミセス・ベローナ」※写真1を見出し、用いることにしました。

※写真1

サッカロミセス・ベローナ

サッカロミセス・ベローナ

なぜ、発芽米なのか?

 「サッカロミセス・ベローナ」で白米と発芽米を発酵させ、それぞれの発酵液に含まれるアミノ酸量を比較しました。もともと栄養価の高い発芽米ですが、発酵させることにより含まれるアミノ酸の総量は、白米の発酵液に比べて約10倍近く多いことが分かりました。※図1

※図1

発酵後の総アミノ酸含量

サッカロミセス・ベローナ

発芽米発酵液に含まれるアミノ酸の総量は白米発酵液に比べて約10倍近く多い

 一方で、アミノ酸や肌によい成分など栄養が豊富ということは、雑菌がとても繁殖しやすく腐りやすい環境になっています。防腐剤を配合せずに「発芽米発酵液」で化粧品をつくることは、通常の化粧品に比べて困難なため、何度も雑菌の繁殖に対する試験を行い、他の成分の配合量バランスを検討しました。

化粧水なのに「水」を配合しない独自の発想
「発酵浸透化粧液」

 バリア機能が正常な肌は疎水性(水となじまない)と言われており、肌に水を垂らすとはじきます。通常、化粧水をなじみやすくするためにはアルコールや界面活性剤などを配合し、表面張力を下げることでなじみよくしています。しかし、アルコールや界面活性剤は皮膚のバリア機能を壊してしまいます。
今回見出した特殊な酵母「サッカロミセス・ベローナ」は、アルコールを産生しない酵母です。この酵母で発酵させた「発芽米発酵液」は、手の甲に垂らしてみるとアルコールや界面活性剤を配合していないにも関わらず、他の成分では成しえない即効性のある肌なじみとやわらかさを感じました。※図2

※図2

肌へのなじみ性
(接触角測定:上腕内側部に精製水と発芽米と垂らした時の角度)

肌に垂らした液滴の角度が小さいほど、肌になじみやすい。

発芽米発酵液は精製水と比較し肌へのなじみがよい。

 また、一般的な化粧水に配合される水の量は、30〜95%※2といわれています。化粧水のほとんどが水からできていると言っても過言ではありませんが、今回、この肌なじみの良さや感触を最大限に活かすためには、水を一滴も入れず、つまり水の代わりに100%「発芽米発酵液」に置き換えて化粧水を作ってしまえばよいのではという考えにいたりました。

 しかし、水の代わりに「発芽米発酵液」を使用するためには大量の発酵液が必要となります。発酵は酵母という言わば生き物が関わるため、様々な条件によってなじみや感触、においなども変わってきます。そこで、発酵液を安定的に生産するために、様々な発酵の条件を検討しながら製品開発を行いました。

 このようにして、水の代わりに100%「発芽米発酵液」を使用した「発酵浸透化粧液」の開発が行われました。

角層成分のタンパク質と油で、角層モデルの錠剤を作成し、一般的な化粧水と
“発酵浸透化粧液”を同時に滴下した時の、浸透の速さを比較しました。

安心・安全で効果の高い化粧品開発を

 「発芽米発酵液」は発酵が終わった段階では飲むことができるほど安全で、栄養価の高い原料です。
「発酵浸透化粧液」そのものは、保湿剤や美容成分などが添加されるため飲むことはできませんが、飲めるほど安全であり効果が高いだけではなく、安心してお使いいただける有用な素材です。

 ファンケルでは、「発芽米発酵液」の開発に満足することなく、肌が自ら持っている力を高める他素材の発酵液の探求を現在も続けています。肌に余分なものを化粧品に添加しないというコンセプトのもと、安心・安全な、肌にとって効果の高い処方開発に日々チャレンジしてまいります。

引用文献

※2 光井武夫(1993) 新化粧品学 南山堂

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