研究成果

フェルラ酸によるタウタンパク質のリン酸化低下作用

POINT

  • ■米ぬかに含まれるフェルラ酸(※1)がアルツハイマー病の原因の1つであるタウタンパク質(※2)のリン酸化を低下させることを新たに発見しました

 認知症は、その予備軍も含め2025年には65歳以上の3人に1人が該当すると予測されており、高齢化社会の現代において大きな社会問題になっています。認知症の大部分を占めるアルツハイマー病は、発症の20年以上も前から、アミロイドβ、リン酸化タウタンパク質などの異常タンパク質がゴミとなって蓄積され、脳内での病変を引き起こしていることが明らかとなり(図1)、発症前からの早期発見、早期予防が重要であると考えられています。

 一般に、タウタンパク質は、年齢とともに、また様々なストレスにより、リン酸化されることで神経細胞内に凝集し、細胞の機能に障害を及ぼすことが知られています。従って、このリン酸化タウタンパク質を低減することが、認知症予防の第一歩であると考えられています。

 そこでファンケルでは、認知症予防を目的とした成分研究を、毎日安心して摂取できることを考慮し、様々な食品成分を用いて進めてきました。その中で、米ぬかに豊富に含まれる成分であるフェルラ酸に着目し、認知症予防に対して更なる有効性につながる新たな作用を明らかにしました。

神経細胞にフェルラ酸を添加すると、タウタンパク質のリン酸化レベル(総タウタンパク質に対するリン酸化タウタンパク質の割合)を低下させることを見出しました(図2)。つまり、フェルラ酸はタウタパク質のリン酸化を抑制することが示唆されました。

 さらに詳細なメカニズム解析により、フェルラ酸はリン酸化されたタウタンパク質をもとに戻す酵素(プロテインフォスファターゼ2A)の活性を高める傾向が確認できました(図3)。つまり、フェルラ酸は、これまで多くの報告があるリン酸化酵素(キナーゼ)阻害でなく、プロテインフォスファターゼ2A活性化という新たなメカニズムを介して、タウタンパク質のリン酸化を抑制することが明らかとされました。

 フェルラ酸によるリン酸化タウタンパク質を低減させる作用はこれまでに報告されておらず、本研究結果はフェルラ酸の認知症予防への可能性をさらに高めるものと期待されます。今後、認知症予防に対するフェルラ酸のさらなる機能性研究を進めていくと同時に、ヒトでの有用性について検討する予定です。

用語解説

※1 フェルラ酸

漢方植物の当帰(とうき)や米ぬかなど、イネ科の植物の細胞壁に多く含まれる成分。強い抗酸化作用があると言われている。

※2 タウタンパク質

タウタンパク質は、神経細胞の信号伝達に関わる微小管に結合するタンパク質。このタンパク質が、過剰にリン酸化されることで神経細胞間の伝達が抑制されることが報告されている。

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