研究成果

食品素材による痛みの緩和に関する研究

ヘルスサイエンス研究センター 久保田 喜子

POINT

  • ■食品成分の「レスベラトロール」に、炎症による痛みを緩和する作用があることを、麻布大学との共同研究により見出しました。

 痛みは、組織の損傷から身を守るための生体の「警告信号」としての重要な役割があります。しかし、体内で過剰な炎症や神経に障害が残ると、原因となっている損傷が治癒していても痛みが続き、必要のない病的な痛み(病的疼痛)が生じることがあります。これによって多くの方が悩みを抱え、日常生活が制限され、生活の質であるQuality of Life(以後QOLと表記)の低下を招いています。現在、病的疼痛の基本治療は、薬物治療、運動療法や物理・装具療法などの保存的治療が中心であり、代替療法(徒手療法、マッサージ、針治療など)も行われていますが、根本的治療法はいまだ確立されていません。

 ファンケルは、麻布大学 生命・環境科学部 武田守教授と、食品の持つ「生体調節機能」の新たな可能性として痛みの緩和に着目し、2015年から神経生理学的研究を進めています。その結果、慢性的な痛みを和らげることが期待されている食品由来のポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、痛みを感じる閾値の上昇により痛みを緩和することが分かりました。さらには炎症が起きてから1日目よりも2日目のほうがより痛みを緩和していることがわかりました。※図1 また、神経活動の記録を取ると、レスベラトロールが、機械刺激による神経細胞の興奮、即ち痛みの伝達を抑制していました。※図2 これらの結果は、レスベラトロールを連続して摂取することで炎症性の痛みを緩和できる可能性を示しています。

 炎症性の痛みの発生と伝達のメカニズムは、必須脂肪酸の「アラキドン酸
※1」を原料として、「シクロオキシゲナーゼ ※2」という酵素の作用により発痛物質である「プロスタグランジンE2 ※3」が生成され、末梢神経が侵害刺激に対して過敏となり、そのシグナルを脳が受け取ることで痛みを感じます。レスベラトロールは、シクロオキシゲナーゼの活性を抑制してプロスタグランジンE2の生成を抑制することで神経細胞の興奮を抑制します。また、神経を興奮させる物質であるグルタミン酸 ※4のグルタミン酸受容体への結合を阻害することで、痛みの伝達を抑制します。※図3

 今後は、さらに高い有効性を持つ炎症性や神経因性の病的疼痛を和らげる食品成分を探索していきます。慢性的な関節痛や腰痛に悩む方々が、安心して継続できる食品成分による痛みの緩和が実現できれば、より多くの方のQOLの向上に寄与できるものと考えています。日常の中でケアできる痛みの緩和に有効な機能性食品の開発を視野に入れ、引き続き研究開発に取り組んでいきます。

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<出典>
Kenta Sekiguchi, Shiori Takehana, Eri Shibuya, Nichiwa Matsuzawa, Shiori Hidaka,Yurie Kanai, Maki Inoue, Yoshiko Kubota, Yoshihito Shimazu, Mamoru Takeda. Resveratrol attenuates inflammation-induced hyperexcitability of trigeminal spinal nucleus caudalis neurons associated with hyperalgesia in rats. Molecular Pain ., 2016, 12, 1-11

Takehana S, Sekiguchi K, Inoue M, Ito Y, Kubota Y, Yui K, Shimazu Y, Takeda M. Systemic administration of resveratrol suppress the nociceptive neuronal activity of trigeminal spinal nucleus caudalis in rats. Brain Res Bull 2016; 120: 117-122.

より引用(一部改変)

用語解説

※1 アラキドン酸

必須脂肪酸の一種。シクロオキシゲナーゼの作用によりアラキドン酸からプロスタグランジンE2が合成される。

※2 シクロオキシゲナーゼ

アラキドン酸からプロスタグランジンE2への代謝に関与する酵素の一種。

※3 プロスタグランジンE2

炎症に伴う痛みを増強する発痛物質の一種。

※4 グルタミン酸

アミノ酸の一種。生体内では神経伝達物質として働く。

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