研究成果

唾液による栄養素の充足状態を測定するための技術の開発

ヘルスサイエンス研究センター 雄長(おちょう) 誠

POINT

  • ■唾液中のタンパク質「フェリチン」を蛍光イムノクロマトグラフィー法で測定する事で、鉄分の充足状態を測定するための技術を、古河電気工業株式会社 先端研究所と共同で開発しました。

 鉄分の不足は、貧血症状や肌荒れ、イライラなど、生活の質を低下させる要因の1つとなります。体内の鉄分は、赤血球の構成成分であるヘモグロビンに含まれているとともに、肝臓などでフェリチン※1と結合して貯蔵されています。このフェリチンの血液中の濃度は、鉄分の過不足の状態と相関することが知られています。

 鉄分が充足した状態では、ヘモグロビンもフェリチンも十分に存在していますが※図1上、鉄分の摂取不足などが原因で、体内の鉄分が不足し始めると、酸素を運ぶヘモグロビンは減少しないものの、貯蔵されているフェリチンの減少がみられます。※図1下

 平成20年度国民健康・栄養調査によると20〜40代の日本人女性の中でフェリチン値が低めの方(25 ng/ml未満)の割合はおよそ60%であると報告されています。
 このことから、多くの方が鉄分不足あるいは鉄分不足ぎみであることがわかります。※図2 そこで、フェリチンを非侵襲的に測定※2することで、自分自身の鉄分の充足状態を知る手段の提供が必要であると考えました。

 ファンケルは、フェリチンが僅かながら唾液中にも存在し、血液中の量と相関する事実に着目し、唾液中の僅かなフェリチンを蛍光イムノクロマトグラフィー法により簡単に測定する技術を古河電気工業先端研究所と共同で開発しました(特許出願済み)。イムノクロマトグラフィー法とは、毛細管現象を利用した抗原抗体反応によって被検物質を測定する技術です。唾液の中に含まれるフェリチンと蛍光を発するナノ粒子に結合させ、毛細管現象を利用してセルロース膜の中を流します。検出部で捕らえられた蛍光粒子が発する蛍光を測定する事で、唾液の中のフェリチンの量を判定します。※図3

 鉄分が不足している方と充足している方の唾液を用い、フェリチンを検出した結果を示します。左側は鉄分不足の方の唾液中のフェリチン量、右側は鉄分が充足している方の唾液中のフェリチン量を測定した結果です。※図4

 写真は、開発中の測定チップ(向かって右)と小型検出装置(向かって左)の画像です。これらを使用することで、手軽に負担なく測定することが可能になります。※図5

 現在健康カウンセリングサービスにおける本技術の活用に向けて、より判定法の精緻(せいち)を高めるため、唾液によるフェリチン値と血液中のフェリチン値との関連性について詳細な研究を行っております。また、本技術を応用し、さまざまな栄養素の充足状態を簡単に測定できる方法の開発を進めてまいります。自身の栄養状態を知る事で食生活等の生活習慣の改善への意識を高めるきっかけとして頂ける事を期待しています。

用語解説

※1 フェリチン

鉄を含む高分子タンパク質。鉄貯蔵タンパク質として知られており、血清中に僅かに存在する血清フェリチンは、貯蔵鉄量の指標として有用である(日本鉄バイオサイエンス学会 鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂[第3版] 6 鉄欠乏性貧血の診断・診断基準 より引用)。

※2 非侵襲的測定

体に傷を付けずに測定する方法。例えば血液検査は注射針で体に傷を付けるため侵襲的な測定方法である。

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