研究成果

「集中力」に関与する脳活動領域を
簡便に測定する方法を発見

イノベーション研究センター 山岡 香央

POINT

  • ■株式会社ファンケルは、2016年から新しい製品を創造するためのイノベーション研究として、「集中力」に関わる研究をしています。その研究結果の一つとして、光トポグラフィ装置※1を使用した従来よりも簡便な方法で、集中している時に活動する脳の領域が測定できることを発見しました。

<集中力が必要な時の脳活動領域を光トポグラフィ装置で測定>

 本研究では、「集中力が必要な作業時」と「集中力が必要ない作業時」の脳における血流量の変化を光トポグラフィ装置で比較測定しました。その結果、「集中力が必要な作業時」において、「集中力が必要ない作業時」よりも特定の脳領域に大きな脳血流量の増加が確認されました※図1

<同時に脳波を測定し、「持続的注意」と「反応抑制」を評価>

 集中力の中で特に重要な機能は、一定時間注意を向ける「持続的注意」機能と不適切な行動を抑える「反応抑制」機能です。本研究では、前頭葉における脳血流量の変化を測定すると同時に、「集中力が必要な作業時」と「集中力が必要ない作業時」に正中頭頂部(Pz)に出現する脳波も測定しました。その結果、集中力が必要な作業時には「持続的注意」を反映するP300という脳波と、「反応抑制」を反映するN2という脳波が大きくなり、集中力に関わる両機能が高まっていることがわかりました※図2 ※図3 ※図4

 これらの結果より、光トポグラフィ装置で測定した脳血流量が増加していた領域は、集中力に関与する脳領域であることが確認出来ました。また、本研究において測定された集中力に関する脳領域は、従来の測定方法である磁気共鳴機能画像法(fMRI)※2やポジトロン断層法(PET)※3を用いた結果に相似しており、今回得られた結果は極めて信頼性の高いものであると考えられます。

 認知症は、高齢化社会の現代において大きな社会問題となっています。認知症の中核症状としては「記憶力」の低下が最もよく知られていますが、実はそれ以外にも著しい「集中力」の低下が見られることが知られています。
 「集中力」に関与する脳領域は、fMRIやPETを用いた研究が多く報告されていますが、いずれの装置も使用環境が限られるため、簡便に集中力の状態を測る装置としては最適とは言えません。
 そこで当社では、簡便な方法で集中力の評価方法を構築する目的で、光トポグラフィ装置を用いて脳領域の測定を試みました。さらに脳波計を用いて持続的注意に関わる脳波と反応抑制に関わる脳波の記録も同時に行い、光トポグラフィ装置による脳領域結果の確認を行いました。なお、光トポグラフィ装置と脳波計の同時計測を行った研究の前例は少ないため、画期的な研究結果となりました。

 今回得られた結果は、集中力の簡便な評価方法の構築へ応用できると考えています。また将来的には、症状として集中力の低下もみられる認知症の研究に繋げることを目指して研究を進めて参ります。
 なお、本結果は「第19回日本ヒト脳機能マッピング学会」(2017年3月9日/於:京都)で発表しました。来場者からは、興味深く将来性のある研究内容である旨のコメントが得られました。

用語解説

※1 光トポグラフィ装置

脳活動に伴う大脳皮質における血流量の変化を計測する装置。

※2 磁気共鳴機能画像法(fMRI)

核磁気共鳴を利用して、脳などの活動に関連した血流動態反応を捉える方法。

※3 ポジトロン断層法(PET)

脳などの細胞の働きを断層画面として捉える方法。

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