研究開発~イノベーションストーリー~

Innovation Story [Beauty♯10] チオレドキシンの研究
ビューティサイエンス研究センター  東ヶ崎 健
ビューティサイエンス研究センター  伊藤 千尋

ファンケルの抗シワ研究最前線
~皮膚真皮の弾性線維を改善する成分「チオレドキシン」~

2020年8月時点

加齢と共に皮膚表面に現れるシワは、多くの方の肌悩みとなっていますが、その原因は、皮膚の中にある線維構造が変性してしまうことにあります。ファンケルでは、この肌悩みを解決するために、その本質となる弾性線維の変性・形成メカニズムについて日々研究を重ねています。ここでは、その最前線の研究からわかった「チオレドキシン」という成分の新たな機能についてご紹介いたします。

肌ストレスと「チオレドキシン」の関係に着目

チオレドキシンは、ヒトだけでなく動物や植物すべての生体内に存在する抗酸化成分で、生きていくのに必須なタンパク質です。医療分野では、チオレドキシンの抗酸化作用やその他の働きについても広く研究が進んでいます。

ファンケルでは、防腐剤をはじめとする肌ストレスの皮膚への影響について長年研究を進めて参りました。その中で、「チオレドキシン」の発現量が防腐剤の添加量に依存して減少することを発見しました※図1

防腐剤や紫外線などによる皮膚細胞へのダメージは、皮膚細胞の増殖能の低下や、細胞によるコラーゲンやエラスチンなど、肌にとって必要な成分の産生量を少なくすることがわかっています。これらのことを踏まえて、私たちは、チオレドキシンの皮膚細胞への影響についてさらに調べることにしました。

※図1

肌ストレスが
チオレドキシンに及ぼす影響

肌ストレスがチオレドキシンに及ぼす影響

「チオレドキシン」の皮膚細胞への効果

※図2

チオレドキシンによる細胞増殖への影響

チオレドキシンによる細胞増殖への影響

防腐剤のストレスによりチオレドキシンの発現が減少することがわかったため、まずは、チオレドキシンの量を積極的に増やすと、細胞にどのような影響を与えるか実験を行いました。 チオレドキシンを細胞に添加すると細胞の増殖が促進されることを確認しました※図2


さらに、3次元皮膚モデル※1にチオレドキシンを添加し、皮膚の構造の維持にとって重要なコラーゲンやエラスチン、さらに基底膜に関係するタンパク質の発現量を測定しました。その結果、チオレドキシンの添加により、コラーゲン線維の素となる1型コラーゲン 、基底膜を構成する4型コラーゲン、7型コラーゲン、ラミニン332、弾性線維を構成するエラスチンの発現量が増えることがわかりました※図3

※図3

表皮、真皮の両方にはたらくチオレドキシン

表皮

真皮

これらの結果から、私たちは、チオレドキシンを皮膚に添加することにより、皮膚内部の弾性線維の変性を防ぎ、線維の構造を改善する機能があるのではないかと考えました。

チオレドキシンが真皮の線維構造を改善することを発見

そこで、私たちは、チオレドキシンをヒト摘出皮膚※2に添加して数日間培養し、内部の弾性線維への影響について観察を行いました。観察には組織透明化技術※3という特殊な技術を用いて3次元的に観察し、詳細な変化を捉えることにしました。

その結果、チオレドキシンを添加した皮膚では、弾性線維がまっすぐに伸長していることや、コラーゲン線維が増えるとともに、離れてしまったコラーゲンとエラスチンが密着するなど、皮膚内部の線維構造が改善されていることを発見したのです※図4

※図4

チオレドキシンは真皮の線維構造を改善する

真の美肌を目指して

ファンケルが、創業以来40年にわたって研究を重ねてきた無添加研究は今、肌をストレスから守り抜くということだけでなく、肌のコアとなる細胞の「生み出す力」と「質を高める力」にこだわった研究に進化してきました。そして、今のこの瞬間だけでなく、この先の美肌が続くことがファンケルの目指す「真の美肌」です。 ファンケルでは、現在も未来も美しく若々しい肌でいられるための研究をこれからも進めて参ります。

【用語解説】

※1  3次元皮膚モデル

表皮細胞と真皮の細胞で構成される人工皮膚モデル。

※2  ヒト摘出皮膚

本研究では、倫理的配慮のもとに取得された美容整形の余剰皮膚を使用。

※3  組織透明化技術

生体組織を光が透過されるように透明にする技術。これにより、組織の内部まで光が届くため、内部を観察することができる。

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