研究成果

タンパク「ARG-1」が糖化による
肌の老化兆候を抑制することを発見

ビューティサイエンス研究センター 榎本 有希子

POINT

  • ■角層中の「ARG-1」量が高い方が糖化による老化が抑制されることを確認
  • ■「ARG-1」が糖化リスクを低下する機能を発見

 私たちの肌では紫外線や乾燥などの外部からのストレスで肌荒ればかりではなく、シミやシワ等の肌の老化が進んでしまいます。しかし、肌の老化は身体の外からだけではなく、内側からも進められてしまうことをご存知でしょうか?その一つが、食事などで摂取した余分な糖質が引き起こす「糖化」※1です。ファンケルでは、独自の「角層バイオマーカー」※2測定を開発し、角層のタンパク質解析から肌の内部に起こる老化リスクを調べる研究を進めてきました。その結果、角層の中の「Arginase-1(ARG-1)」※3が、加齢とともに起きる糖化と関連することを発見しました。

【角層中の「ARG-1」量が高い方が糖化による老化が抑制される】
 糖化とは、糖が体内のタンパク質などと結びついて生じる「AGEs(糖化最終生成物)」※4蓄積する老化の過程のひとつです。シミやシワ、たるみといった老化兆候の誘因となることから、酸化と並ぶ老化促進因子のひとつとして注目されています。身近に測定されているAGEsの一種として、赤血球のタンパクであるヘモグロビンと血中のブドウ糖が結合したHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)※5があり、この値は加齢とともに増加するのですが、高いと糖尿病になる可能性が高い、すなわち糖化が進んでいる状態と言われています。そこで、糖化する可能性が高い方として、HbA1cの高い(≧5.5%)40代から60代の健常女性26名を選び、糖化抑制に働く角層バイオマーカーのタンパクを探索しました。 その結果「ARG-1」の量が多いほど皮膚の色が明るく※図1、シワの面積が少ないことが認められました※図2。これにより「ARG-1」に、糖化による老化兆候を抑制している可能性があることが分かりました。

※※図1 皮膚の明るさとARG-1 ※図2 シワ面積とARG-1量

【「ARG-1」の糖化による老化を抑制する機能解析】
 次に「ARG-1」がなぜ老化兆候を抑制するのかを解析しました。解析には、AGEsによる糖化の老化兆候を進める重要なタンパクである「RAGE」※6に着目し、培養表皮角化細胞を用いて「ARG-1」の発現抑制有無による「RAGE」の発現量を比較しました。その結果「ARG-1」を抑制すると、抑制をしていないものに対して発現量が10倍にも増加していることが分かりました※図3
これにより、「ARG-1」は「RAGE」の発現に関与し、「RAGE」の発現を抑える機能を有して、糖化による老化兆候を抑制することが分かりました※図4

※図3 ARG-1発現抑制有無とRAGE発現量の比較
※図4  ARG-1の糖化による老化抑制機能

【本研究成果による今後の製品開発】
 当社の角層バイオマーカーの研究で、「ARG-1」をはじめ、角層中の7つのタンパク質を測定し、一人ひとり異なる個人の有する老化リスクを明らかにし、そのリスクに対応するパーソナル美容液の開発へ応用してまいりました。 今回の研究でARG-1が、抗糖化にも関わることが明らかとなり、角層バイオマーカー解析にもとづくパーソナル美容液が、「抗炎症」「抗酸化」「抗糖化」といった全方向からのアンチエイジングを叶えることが可能となりました。ARG-1を増加させる化粧品成分として、パーソナル美容液には「アケビエキス」を配合しておりますが、今後もさらに研究を進め、抗糖化機能を主軸とした効果の高いアンチエイジング化粧品の開発を進めてまいります。

用語解説

※1 糖化

身体の中でタンパクと余分な糖が結びついてタンパクが変性、劣化してAGEs(糖化最終生成物)という名の老化物質を生成する反応のこと。AGEsは分解されにくく、AGEsの蓄積が老化や様々な病気(糖尿病、高血圧、がん等々)の原因とされる

※2 角層バイオマーカー

頬に貼ったテープ 1 枚から取れた角層のタンパクの分析から、一人ひとり異なる肌状態や老化リスクを解析するファンケル独自の測定技術

※3 ARG-1

アルギナーゼ 1。シミの原因となる活性酸素の発生を抑え、メラニン産生が起こらないようにバランスを調整し、シミを防ぐ力があるタンパク。身体の炎症時に増加し、正常化させる機能をもつ。ARG-1 は、生体内で発生する。iNOS (inducible nitric oxide synthase) と拮抗してL-arginineからのNO (nitric oxide) 産生を抑制する抗酸化機能を有する

※4 AGEs

Advanced Glycation End Products(終末糖化産物)。タンパクと糖が加熱されてできた最終生成物質のことで、老化を進める原因物質とされる

※5 HbA1c

ヘモグロビン・エイワンシー。過去 1-2 カ月の血糖値の平均を反映して上下するため、血糖コントロール状態の目安となる検査。普段の血糖値が高い人はHbA1c値が高く、普段の血糖値が低い人はHbA1c値も低くなる。HbA1c値が 5.5%未満の方は血糖値が正常範囲内、5.6-6.4%の方は血糖値が高めの人(境界型糖尿病)、6.5%以上で糖尿病と考えられる

※6 RAGE

Receptor for AGE (AGEs受容体)。細胞の表面にあるタンパクで、AGEsが付くと炎症や老化を引き起こす指令を出す。※図5 で示すように、肌のRAGEは 20 代より 60 代の方が多く存在している。

※図5 年齢と皮膚中RAGE量の比較画像

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