研究成果

コラーゲン受容体“DDR2”の新機能発見
〜DDR2は壊れたコラーゲンやエラスチンの線維形成に重要な役割を果たす〜

ビューティサイエンス研究センター 蔀 泰幸

POINT

  • ■DDR2は、他のコラーゲン受容体と比べても、コラーゲン線維形成への寄与が高い。
  • ■DDR2は、コラーゲンだけでなくエラスチンの線維形成も制御し、真皮機能全体の維持に関わる。

 肌の真皮は、線維芽細胞によって生成される「コラーゲン」や「エラスチン」※1という線維状のタンパク質が網目状にネットワークをつくることで、弾力やハリを保っています。線維芽細胞は、これらのタンパク質の生成だけでなく、分解や再生を制御しています。
 シワやたるみは、これらの産生低下だけでなく、コラーゲンの分解などにより引き起こされることが知られています。
 ファンケルでは、シワやたるみを制御する方法のひとつとして、コラーゲン修復機構について研究を行っていますが、その一つがダメージセンサーDDR2※2の研究です。DDR2は線維芽細胞※3に存在するコラーゲン受容体※4のひとつで※図1、紫外線などの外敵要因で真皮コラーゲンがダメージを受けると、それを認識して線維芽細胞にコラーゲンを新たに生み出すよう指令を出すタンパク質です。ファンケルでは、DDR2がコラーゲン制御だけでなく、エラスチンの制御にも関わっていることを明らかにしました。シワやたるみのメカニズムを解明することで、より効果の高いアンチエイジング化粧品の開発が可能となります。

※図1 真皮の線維芽細胞上に発現するDDR2

【損傷コラーゲン存在化におけるDDR2とⅠ型コラーゲンの変化】

 まず、我々は、コラーゲンがダメージをうけた状態として、紫外線を照射して損傷を受けたコラーゲンを作成し、そのコラーゲンを線維芽細胞に与えたときの挙動を評価しました。具体的には、真皮に影響を与えるUVAを照射して損傷させたコラーゲンを線維芽細胞に添加し、DDR2とDDR2からのシグナルで制御されるⅠ型コラーゲンについて調べました。その結果、損傷したコラーゲンの添加によって、DDR2とⅠ型コラーゲンの遺伝子発現量が増加しました※図2。また、この現象がDDR2の阻害剤によって抑制されたことから、損傷コラーゲンに対する反応の一部がDDR2を介していることが確認されました。

※図2 損傷コラーゲン存在化でのDDR2とⅠ型コラーゲンの変化

【DDR2と他のコラーゲン受容体とのコラーゲン線維形成能の比較】

 次に、DDR2がコラーゲン修復に与える影響として、損傷コラーゲンの修復に関わる他の受容体、Endo180、インテグリンβ1とDDR2の比較を行いました。それぞれの受容体を減少させたときの細胞で、コラーゲン線維の形成量を比較した結果、DDR2を減少させたときに、もっともコラーゲン線維形成が阻害されていることがわかりました※図3。このことから、損傷したコラーゲンの修復メカニズムにおいて、DDR2の関与が非常に大きいと言えます。

※図3 コラーゲン線維形成におけるコラーゲン受容体の影響

【DDR2の新たな働きの発見】

 コラーゲンの線維形成において重要な働きを示すDDR2が、真皮全体の機能維持に重要な役割を果たすと考え、コラーゲンと同様に肌の弾力維持に関わる真皮エラスチン線維への影響を評価しました。DDR2を減少させた線維芽細胞で、エラスチン線維および、エラスチンを構成するタンパク質量を評価した結果、エラスチン線維の形成が抑制され、さらに、エラスチン線維の形成に関連するEMILIN2の生成量も抑制されました※図4。EMILIN2※5は、エラスチンを構成するタンパク質で、フィブリリン、トロポエラスチンとともに重要な役割を果たしており、これらのタンパク質を結合する役割をもっています。この結果により、DDR2は、エラスチンタンパク質同士の結合性に寄与することで、エラスチン線維形成を促すことが示唆されました。 以上から、外的ダメージにより損傷したコラーゲンの修復に関わる因子の中でも、DDR2がコラーゲン線維形成に関して非常に重要な役割を担っているとともに、DDR2はコラーゲン線維だけでなく、エラスチン線維形成にも関与することで、真皮の線維状態を維持し、肌の弾力を保つために大切な役割を果たしていることが確認されました※図5

※図4 DDR2減少時のエラスチン線維およびEMILIN2産生への影響
※図5 DDR2のコラーゲン線維およびエラスチン線維形成への作用

【本研究結果の応用展開】

肌のシワやたるみは、紫外線による真皮のDNA損傷やコラーゲンの分解などにより引き起こされます。本研究では、真皮のコラーゲン修復に重要な役割を果たすDDR2が、コラーゲンだけでなくエラスチンの線維形成も調整することが分かりました。また、老化によってDDR2が減少することが、これらの形成を遅延させ、真皮弾力性の低下の一因になると考えられました。今後もさらに研究を進め、DDR2の減少を制御する効果的な素材探索を行い、新しいコンセプトのアンチエイジング化粧品の開発に応用してまいります。

※本研究結果は2017年9月27日~30日に開催された第47回欧州研究皮膚科学会(47th Annual ESDR Meeting)、2018年8月25日~26日に開催された第14回加齢皮膚医学研究会にて口頭発表しました。

用語解説

※1 エラスチン

弾力線維あるいは弾性線維とも呼ばれ、コラーゲン線維を支える役割がある

※2 DDR2(Discoidin domain receptor 2)

線維芽細胞に存在し、損傷したコラーゲンを認識してコラーゲンの再構築に関連するタンパク質

※3 線維芽細胞

真皮に存在する細胞で、コラーゲンやエラスチンなどを産生する細胞

※4 受容体

特定の刺激物質を受け取り、情報を伝達する物質

※5 EMILIN2(Elastin microfibril interface-located protein 2)

エラスチンを沈着させて線維状にするために足場となるタンパク質の一種

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