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気候変動への取り組みと情報開示

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サステナブルな社会の実現には、気候変動関連の課題解決が最優先と考えます。ファンケルグループは、2050年を見据えた長期的な視点で予測される機会とリスクを考慮し、緩和と適応の両面から気候変動に取り組みます。そして自然の恵みに感謝し、企業活動のあらゆる面において、自然環境の保全に貢献します。
気候変動に対する企業の情報開示要求が世界的に強まり、2017年6月にTCFDから最終報告書が公表されたことを受け、ファンケルグループは2020年10⽉にTCFDの提言への賛同を表明しました。

TCFD提言では、気候変動に関する「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」の各項目に関する情報開示が推奨されています。この4つの項目に沿った情報の開示とともに、シナリオ分析、気候変動に伴うリスクと機会を評価しました。
ファンケルグループは、これからも長期的視点に立って気候変動に真摯に向き合い、事業に影響する機会・リスクへの理解を深化させ、その取り組みの積極的な開示に努めていきます。

TCFD:
G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)*により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。
*各国の金融関連省庁及び中央銀行からなり、国際⾦融に関する監督業務を行う機関

ガバナンス体制 サステナビリティ委員会

ファンケルグループは、サステナビリティを経営の中核におき、中長期的な企業価値を向上させるために、取締役執行役員、執行役員によって構成された「サステナビリティ委員会」を年4回開催しています。代表取締役 社長執行役員 CEOが委員長を務め、サステナビリティの取り組みについて、目標に対する進捗管理や評価を行うとともに、取締役会が監督及びモニタリング機能を果たしています。

戦略

ファンケルグループは2030年を見据えた長期ビジョン「VISION2030」を策定し、その実現に向けて事業を展開しています。2018年6月には「ファンケルグループ サステナブル宣言」を策定し、持続可能な開発目標(SDGs)と足並みをそろえて、CO2排出量の削減目標を定め、その目標を達成するための取り組み、製品の環境負荷低減を通じて持続可能な社会の実現に貢献していく意思を表明しました。
2021年度からスタートした「第3期中期経営計画 前進2023」では、ファンケルグループが対処すべき環境の重点課題として、気候変動への取り組みを最優先として、課題をより明確にして戦略を見直しました。2021年5月に「2050年度までにCO2排出量実質ゼロ」の目標を発表し、積極的なCO2排出量の削減を推進しています。また、製品容器などのプラスチック使用量の削減、持続可能なパーム油の調達などについても定量目標を定めて、ステークホルダーとともにグループ全体で推進しています。

リスク管理

ファンケルグループでは、事業全般に関わる気候変動シナリオに基づき、想定されるリスク、機会の定性分析と財務影響の算定を進めています。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が2014年12月に公表した第5次評価報告書(AR5)で示したRCP2.6にもとづくシナリオ分析では、エネルギー価格変動、炭素価格動向、及び燃料規制動向などを重要なインプット項目として用いています。「VISION2030」では、本格的なグローバル化の推進を目指しており、海外事業の拡大により、エネルギー調達コストや脱炭素税などが製造原価等に重要な影響を及ぼす可能性があります。その他、地球温暖化による気象災害の激甚化、熱帯性感染症が拡大する疾病リスクの増大、農林水産資源の収量減少や品質低下等の資源の枯渇、これに依存する当社製品の原材料や資材の調達やサプライチェーン全体に対する多くのリスクが想定されます。それらのリスク対応として、再生可能エネルギー導入を促進しCO2排出量の削減を進めるほか、エコ製品の開発、持続可能な原材料調達、温暖化や感染症の拡大に対応した製品開発などを推進していきます。

気候変動におけるリスクと機会

〈前提条件〉

対象期間
~2030年
対象範囲
国内の販売3チャネル(通信販売、直営店舗、卸販売)における、主に化粧品事業・健康食品事業
算定条件
IPCC第5次評価報告書RCP2.6(2℃シナリオ)等に基づき分析
項目別に対象期間内の想定される売上、利益影響額を算定
公共事業等のインフラ強化やテクノロジーの進化等は考慮しない
世の中の変化 ファンケルグループのリスクと機会 財務的影響額(円)




気候変動対応の政策、規制強化

炭素税コストの増加

気候変動の緩和を意図したCO2排出量およびプラスチック使用量に対する政策や規制の強化が行われた場合、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入、製品のプラスチック使用量削減にかかる投資コストが増加します。中でも、炭素税が導入されると、ファンケルグループの負担が増加することが想定されます。対応策として、国内の3工場(滋賀工場、群馬工場、三島工場)と関西物流センターに太陽光パネルを設置し、2022年4月以降、国内拠点における、再生可能エネルギー由来電力、カーボンニュートラルなガスへの切り替えを進めています。

炭素税コスト
約2.5億円

※2030年度のコストを想定

感染症の発生による外出制限、インバウンド需要減少

店舗・流通の売上減少

水媒介感染症や病原媒介生物の変化で感染症が拡大することが予測されています。感染症が発生した場合、直営店舗や卸販売では、渡航規制によるインバウンドの売上減少や、国内においても外出自粛が発生し売上が減少することが想定されます。
対応策として、通信販売、直営店舗、卸販売と多様な販売チャネルをもつファンケルグループのマルチチャネルを最大限活用し、通信販売に誘導することにより、消費者の利便性の向上を図ります。

売上高減少額
約15億円

※COVID-19を参考に算定






異常気象の激甚化、海面上昇

生産能力の低下に起因した売上減少

海面水位上昇による浸水リスクと、集中豪雨等の影響により河川の氾濫が起こる事による、水害リスクが考えられます。ファンケルグループの千葉工場は、千葉県流山市の江戸川沿いに立地し、主力製品のマイルドクレンジングオイル専用棟を保有しています。江戸川が氾濫し工場が操業停止(1ヶ月間と想定)となった場合、マイルドクレンジングオイルの売上高減少が見込まれます。
対応策として、「オールハザード型」のBCP(事業継続計画)を策定し、災害が起きた場合にも、早期に復旧できるよう備えています。

マイルドクレンジングオイルの売上高減少
約10億円

※工場操業停止1ヶ月間と想定

農産物由来の原材料の生産量減少や品質低下

原料調達コストの増加

気候変動による温暖化や異常気象の影響を受け、農産物由来の原材料の生産量減少や品質低下などが起こり、原料調達コストの高騰、代替品への切り替え費用などの追加コストが係ることが想定されます。なかでも、発芽米、青汁などの農作物の収穫量減少、グリセリン等のパーム由来原料が入手困難になった場合は、当社の事業において製造原価の上昇という大きな影響をおよぼす可能性があります。
対応策として、環境の重点課題に「持続可能な調達」を掲げ、サプライチェーン上のリスクの把握、対処の検討に努めています。

青汁、発芽米、パーム由来原料等の売上原価増加額
約2~5億円


 
感染症の発生による消費者ニーズの変化

新たなニーズに応える製品の売上高増加

感染症が発生した場合、消費者の健康や衛生への関心は高まることにより、新たなニーズに応える製品やサービスとして「免疫系商品」「衛生商品」への需要が増えることが期待できます。

売上高増加額
約10億円

※COVID-19を参考に算定

通信販売の売上高増加

感染症が発生した場合、外出自粛や店舗休業等で通信販売への需要が高まることが想定されます。ファンケルグループのマルチチャネルを最大限活用し、直営店舗や卸販売から通信販売へ誘導することにより通信販売の売上高増加が期待できます。

売上高増加額
約25億円

※COVID-19を参考に算定

ESG評価による企業価値の向上

市場評価が上昇

投資家の投資判断において気候変動対応が重要性を増しており、気候変動への対応を積極的に行うことにより、ESG評価が向上し株価の下支えとなることが期待できます。ファンケルの発行株式全体の4割超を国内外の機関投資家が保有しており、気候変動情報を積極的に開示することで、株価の上昇につながる可能性があります。

株価評価額
約30億円

※株価1%上昇と想定

指標と目標

2023年3月にIPCC第58回総会で採択された、第6次評価報告書(AR6)では、気候変動が第5次評価報告書(AR5)による予測よりも早く進むことが示唆され、「パリ協定」の長期目標である1.5度を達成するためには、温室効果ガスの排出量を「2035年までに60%削減すること(2019年比)」が必要であることが明示されました。これにより従来よりも一層の対策強化が求められています。ファンケルグループでは2021年度に発表した「第3期中期経営計画 前進2023」では、気候変動に関わる目標を、世界的な潮流および国の方針に呼応して、大きくストレッチし、「2050年までにCO2排出量実質ゼロ(スコープ1+2)」とする目標を設定しました。

2020年のCOP21における「パリ協定」で定められた、18世紀後半からの工業化(いわゆる産業革命)当時の地球の地上平均気温から1.5℃上昇未満に温暖化を抑制する目標

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