社外役員メッセージ

様々な企業再生で培った知見を活かし、ファンケルの新たな挑戦を後押しする

松本 章

【略歴】
1994年に(株)住友銀行[現 (株)三井住友銀行]入行後、1999年にKPMGセンチュリー監査法人[現 有限責任あずさ監査法人]入所。現在は、(株)MIT Corporate Advisory Servicesの代表取締役社長として、数多くの企業再生アドバイザリーを行う。(2003年公認会計士登録)

社外取締役として求められていること

ファンケルの経営陣が、社外取締役の私に期待していることは、二つあると考えています。一つは様々な企業再生のコンサルティング業務に携わってきた経験をもとに、ファンケルの将来の成長に資する戦略や施策の提言をすることです。もう一つは外部から公認会計士としての知見も活用した客観的視点で社内の経営陣に気づきを与えることだと考えています。

ファンケルの強みと課題

私から見てファンケルの強みは、大きく二つあります。一つは、「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」という創業理念が、役員はもとより全従業員に深く浸透していることです。世の中が大きく変化する中で発生する新しい「不」に対して敏感に反応し、全従業員がそれに対応する製品・サービスを追求し続けています。
こうした経営は、昨今、パーパス経営と言われ、長期的に企業価値を向上させるという検証がなされていますが、創業以来この経営を自然体で実践できている点は、大きな強みです。
もう一つは、化粧品と健康食品の二つの領域で、競争力のある素晴らしい製品を持っていることです。加えて、お客様に多くの「ファンケルファン」がいることも特筆すべき点です。ファンケルは、世の中の「不」を解消するために、「無添加化粧品」や「高品質・低価格の健康食品」を開発し、プロダクトアウト型の企業として成長してきましたが、その過程で、お客様に対して、いかに気持ちよく安心して使用してもらえるかを考え、緊密なコミュニケーションを通じて、お客様を本当に大切にしてきたことで、最初は「製品のファン」だったお客様が「会社のファン」になってくださっています。この長年にわたり築き上げられてきたお客様との揺るぎない信頼関係を持つファンケルを私は「顧客のインフラカンパニー」と評しています。このインフラこそが、最高の無形資産であり、あらゆる事業活動を支え、今後の成長の原動力になっていくと考えています。
一方で、このお客様基盤の年齢層が少しずつ上がってきていることは課題だと感じています。この先、ファンケルが持続的な成長を続けるには、新しい若い世代のお客様にもどんどん製品・サービスをご利用いただき、ファン層を拡大しなければなりません。そのためには、成功体験や既成概念にとらわれることのない、若い世代の自由な発想が鍵になってきます。これまでは、優秀な経営者がトップダウンで、従業員を引っ張っていく印象が強い会社だったと思います。現経営陣は、これからの若い世代のファン層拡大のためにも、従業員の皆さんが自発的に挑戦し活躍できる環境づくりに力を入れています。今後、自発的な挑戦が実を結び、ボトムアップ型での企業・組織の成長が促されることを期待しています。

洗練されたガバナンス体制への進化

現在の取締役会は、年々運営方法の改善が進められ、社外の役員も厳しい意見を発言できる自由闊達な雰囲気が醸成され、役員全員の英知を結集できる洗練されたガバナンス体制へ進化しています。また、DXや人的資本の強化など、世の中の大きなトレンドに関して、社外役員が中心となり議論するテーマセッションを行い、経営計画に反映させていることも評価できます。また、2022年度には、次期CEO候補者および次期役員候補者の人材要件を定義するサクセッションプランを明文化しました。十分な議論の結果、人材要件は、創業理念・経営理念を体現でき、ファンケルに深い愛情を持っているなど、独自性のある要件も数多く含まれました。次世代の経営層への期待がひしひしと伝わる内容で、経営の持続性にも大きく寄与すると考えています。

最後に

ファンケルは、サステナブルな成長を可能とする多くの要素を兼ね備えた企業です。従業員も思いやりや協調性にあふれる、とても良い人たちばかりです。しかし、大きな飛躍を実現するイノベーションを起こすためには、より視野を広げ、社外に目を向けることも重要です。
たとえば、感性が全く異なる外部人材を大胆に採用することも面白いと思います。いわゆる組織にこれまでいなかった異分子を入れることで、予期しない化学反応を起こさせることは、発想が硬直化しやすい組織を進化させるかもしれません。同様に、全く異なる業態・文化を持つ他社とのアライアンスにも期待しています。ファンケルには強い製品がたくさんありますので、他社とのコラボ製品などをこれまで以上に展開できれば、そのポテンシャルは計り知れません。もちろん、こうしたアプローチは大きな挑戦を伴いますので、引き続き、私の持っているネットワーク、経験、知見をフル活用して、社外取締役として全力でサポートしていきたいと思います。

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