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エラスチン線維の質は40代で急激に低下することを発見
― エラスチン構造の質を決める「細さ」と「直線性」の数値評価法を開発 ―

2023年2月22日PDF版はこちら

 株式会社ファンケルは、シワやたるみの予防や改善を目的とし、それらのメカニズムについて解明を進めています。その一つとして、加齢でエラスチン線維※1は「量」が減少するだけでなく、形などの「質」も変化し、それらがシワやたるみに影響すると考えて研究を行っています。

 これまでの研究において、シワの部位ではエラスチン線維の構造が太く、短く、湾曲※2する変化が起こっていることや、エラスチン線維の構造維持に重要なタンパク質を発見したこと、エラスチン線維の形状と肌の敏感性の関係などを報告しています(*)。 これまでの研究では、MPT Compact※3を用いて非侵襲的※4に観察した生体内のエラスチン線維観察において、客観的な評価ができないという課題がありました。そこで、得られた観察画像を画像解析から数値で評価する方法を開発し、加齢によりエラスチン線維が湾曲すること、特に40代で、急激にエラスチン線維の形状に変化が起こることを発見しましたので、お知らせします。 なお、本研究内容の一部は、東京都で開催された第89回 SCCJ研究討論会2022(2022年12月1、2日)で発表しました。

*参考

https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20191129_hifunotoumeikakijutsuemilin1.pdf

https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20210929_shiwabuinoerasuchin.pdf

https://www.fancl.jp/laboratory/pdf/20211101_erasuchinnokouzouijinihabunkaisasenai.pdf

https://www.fancl.jp/news/pdf/20211221_shiwanogenindearuerasuchin.pdf

 肌本来の機能を高めるエラスチン線維の研究は、今までシワ改善やエイジングケアの製品化に応用してきました。本研究の成果は、今後当社の強みである無添加アンチストレス研究とともに、エラスチン線維の「質」を高める新たなアプローチを融合させ、新しいコンセプトのアンチエイジング化粧品の開発に努めてまいります。

<研究方法・結果>

【画像解析による数値評価法の開発】

 20代から60代の女性35人を対象に、MPT Compactにより頬部のエラスチン線維の画像を取得しました。得られた画像からImage J(Fuji)※5の画像解析手法を用い、より客観性の高いエラスチン線維構造の数値評価法の開発を検討しました。これまでの研究から、エラスチン線維の加齢による構造変化は、太く、短く、直線性が低下して湾曲することから、線維の「質」を決める「線維の細さ」と「線維の直線性」について評価法を検討しました。最初に、エラスチン線維の直線性は、線維の始点と終点を結ぶ直線(次ページ図1:赤線)の長さと、実際のエラスチン線維の長さ(次ページ図1:緑線)を測定し、それぞれの比を「直線性数値」として算出しました。さらに、エラスチン線維の細さは、線維の直径を測定して「細さ数値」としました(次ページ図1:枠内)。

図1 数値評価(直線性、細さ)の求め方

湾曲しているエラスチン線維の始点と終点を結ぶ直線の距離をa(赤)とし、実際の線維の長さb(緑)の比(a/b)を、直線性を示す「直線性数値」としました。また、エラスチン線維の直径を測定し、「細さ数値」(枠内参照)としました。
始点と終点を結ぶ直線a(赤)が短く、同じく始点と終点の実際の長さb(緑)が長くなると、エラスチン線維の直線性数値(a/b)は低くなり、湾曲していることになります。

 

 また、図2に示す「線維の細さ」および「線維の直線性」について、5段階点数の目視判定の評価基準を設定しました。前述の数値評価開発に使用したエラスチン線維画像を使用し、標準基準を用いてエラスチン研究に精通する専門評価者5人による目視判定評価※6を行い、それぞれ「細さ」と「直線性」の「目視スコア」としました。目視スコアが高いほど、エラスチン線維は細く、直線性が高いことを示します。

 

 最後に35人分のエラスチン線維構造画像を、図3には線維の細さの「数値評価」と「目視スコア」、図4には線維の直線性の「数値評価」と「目視スコア」をプロットして比較しました。

各測定対象者のエラスチン線維画像の「細さ(図3)」「直線性(図4)」について、縦軸に数値評価、横軸に目視スコアをプロットしました。

 

 その結果、数値評価は「線維の細さ」および「線維の直線性」の両指標において、目視評価スコアとの間には相関が認められ、この数値評価方法をMPT Compactによるエラスチン線維構造を客観的に評価する方法としました。

【年代とエラスチン線維の構造変化を数値評価方法で確認】

 加齢によるエラスチン線維の構造変化、特に線維の直線性が低下し、湾曲化することがこれまでの研究で確認されています。そこで、今回得られた数値評価方法を用いて年代別のエラスチン線維の構造変化を確認するため、前述同様に20代から60代の各年代のMPT Compactで観察したエラスチン線維画像を使用し、直線性と年齢の関係を調べました。

 その結果、加齢によりエラスチン線維の直線性の低下が認められ、40代で急激に低下が起こっていることが確認されました(図5)。

 これまで、エラスチン線維構造の加齢による形状変化は、摘出皮膚で確認してきました。今回、MPT Compactによる観察で、実際の肌においても加齢によるエラスチン線維構造の形状変化を確認することができました。

 さらに、このエラスチン線維構造の客観的な数値評価法を用いて解析することで、エラスチン線維の質を決める構造は、40代で急激に直線性が低下して湾曲する変化が起こっていることが確認されました。このことは、シワ、たるみの老化兆候が顕著となる年代と一致し、この老化兆候を予防するためには、40代までのエラスチン線維の構造変化を抑制することが重要となることが示唆されました。

<研究背景・目的>

 当社ではこれまで、摘出皮膚組織において加齢に伴ってエラスチン線維の構造が太く、短く、湾曲するなど変化することを報告してきました。さらに、MPT Compactを導入し、これまで困難であった実際の肌におけるエラスチン線維の状態を観察してきました。今回、得られたエラスチン線維画像の客観的評価を目的として、画像解析による数値評価を検討し、年齢によるエラスチン線維の変化について検証することとしました。

【用語説明】
※1 エラスチン線維
真皮の構造を構成するタンパク質であり、皮膚に弾力性を与え、ハリを保つ役割がある。エラスチン線維の変性は皮膚のたるみやシワの要因と考えられている。

※2 湾曲(化)
弓なりに曲がることを意味し、ここではエラスチン線維が直線性をなくし曲がることを意味する。

※3 MPT Compact(Multiphoton Tomography Compact: JenLab社)
皮膚組織を表皮から上層真皮まで断層画像で見ることができる。フェムトセカンドファイバーレーザ780nmを使用し、セカンド ハーモニック ジェネレーション(SHG)によるコラーゲン画像と、自家蛍光によりエラスチン画像が同時に得られる。「コラーゲン」と「エラスチン」を非侵襲で分離観察することができる。

※4 非侵襲的
生体(身体)に傷や痛みなどの負担を与えないことを意味する。

※5 Image J(Fuji)
画像処理ソフトウェア。拡張性が高く、さまざまな画像処理や解析の課題に対応している。

※6 目視判定評価
専門評価者(評価する対象の知識を有した者)による目で見て行う評価。最も身近な評価方法。

 

本件に関する報道関係者の皆様からのお問合せ先

株式会社ファンケル 広報部 陣内真紀 TEL:045-226-1230 FAX:045-226-1202 / http://www.fancl.jp/laboratory/