BEAUTY08「水性保湿成分」を
オイル中に配合する革新的発想と技術

クレンジングオイルの開発

  • 化粧品研究所三譯 秀樹

2017年11月時点

より高いクレンジング機能と使い心地を求めて

不動の人気を誇る「マイルドクレンジングオイル」。しかし私たちファンケルは現状に満足することなく、さらなる機能向上をめざして日々研究開発に取り組んできました。そして今回、「どんなメイクにも素早くなじんで、肌をこすらずに、するんと落とす」という機能を今まで以上に高め、エイジングの素になる角栓を落とす新技術を採用。さらに、うるおいをしっかりと残して洗い上げることでスキンケアの効果もある、新しい「マイルドクレンジングオイル」を開発しました。

「変えてはいけないこと」はそのままに、機能を向上させる

人気商品のリニューアルは、簡単なものではありません。私たちファンケルも「マイルドクレンジングオイル」のリニューアルにあたり、何を強化して何を守るのか、大いに悩みました。そこで頼りにしたのが、現行の製品に対するお客様からの声。それを詳細に検討することで、次世代のクレンジングオイルに何が望まれているのかが見えてきたのです※表1
これまでの製品で好評をいただいている部分はそのままに機能を向上させることを目標に、「マイルドクレンジングオイル」のリニューアルに着手したのです。

(表1)

油剤に水性保湿成分を配合するという革新的発想

三譯研究員

「洗浄機能」を強化するには、どうすれば良いのか?
クレンジングオイルの基本構成は、油剤と洗浄成分の2つの組み合わせです。洗浄機能を強化するには、一般的には洗浄成分の配合量を増やす、あるいは洗浄力の強い成分を配合することが考えられますが、これらの方法では、肌に対する安全性の低下や、のびが悪くなるといった使用性の低下が問題となります。
そこで私たちは、洗浄成分の量を増やさずに洗浄機能だけを向上させることができる技術の開発に取り組みました。
まずは原点に戻り、これまでの「マイルドクレンジングオイル」に採用してきた独自開発の油剤と洗浄成分の組み合わせが本当にベストであるのかを再検討しました。しかし、組み合わせの検討のみでは大幅な機能向上は見られませんでした。もっと大胆な発想が必要だと考えた私たちは、次に「現在配合している洗浄成分の性能をサポートし、さらに引き出す成分の探索」に取り組みました。そこで目をつけたのが、スキンケア製品や水性クレンジング料によく使われる「水性保湿成分」です。水とよくなじむことを特徴とする水性保湿成分をクレンジングオイルに配合することで、濡れた手で使える機能と洗い流しの速さのさらなる向上が期待できると考えたのです。クレンジングオイルの機能を高めるために水性保湿成分を配合するというのは画期的な発想でした。

苦難の中で見つけた新しい配合技術

三譯研究員

しかし「水と油」という言葉があることからもわかるように、油であるクレンジングオイルに溶け、なおかつ機能が向上する水性保湿成分を見つけるのは、簡単なことではありませんでした。
油剤、洗浄成分、水性保湿成分の組み合わせと比率、水を少しずつ加えたときの変化を詳細に検討すること約1年。優れたメイクなじみと溶解性を持つ「ファンケル独自開発の油剤」と、油に溶ける保湿剤である「グリセリン類似物質」の組み合わせによって、オイルの洗い流しやすさが向上することを見出したのです。ところが、「グリセリン類似物質」を添加すると、濡れた手で使用したときにクレンジング力が低下してしまうことがわかり、これを解決することが最後の課題でした。

この課題を何とか解決すべく様々な検討を続けた結果、非常に優れた保湿性を持つ「グリセリン」を組み合わせることで、多量の水をオイル中に透明に抱え込める、すなわち濡れた手でもクレンジング力が低下することなく使用できることを発見しました※図1。 これらの成分を組み合わせることによって、新マイルドクレンジングオイルの処方骨格が完成したのです。

クレンジングオイルと水を混ぜた時の状態とクレンジング力(図1)

クレンジングオイルと水を混ぜた時の状態とクレンジング力

結果

新処方Cのクレンジングオイルは、水分量が多くてもクレンジング力が高い状態である。

この成分の組み合わせにより、水を抱え込める量が大幅に増加、濡れた手で使ったときのクレンジング力が向上しました※図2。さらに、すすぎのときには水に触れるだけでオイルが自発的に素早く分散することから肌に再付着せず、すっきりと洗い流せる機能が向上しました※図3
本技術は洗浄成分を増やしていないことから肌への優しさはそのままであり、洗顔後はメイクやクレンジングオイルがすっきりと洗い流されていながらも肌に大切なうるおいは残すことで、つるつるすべすべの肌に導くことができるのです。
この研究成果は国際学会※1でも発表し、特許も出願中であり、ファンケルが独自に開発した新技術です。

クレンジングオイルに水を添加したときの外観とクレンジング力(図2)

【試験方法】

人工皮革に口紅を塗布し、摩擦試験機で20回擦った後、水洗いした。
使用メイク:ファンケル カラーフィットルージュパレットa #84 ビロードレッド

結果

新処方Cのクレンジングオイルは、多少の水と混ざっても透明であり、クレンジング力が低下しない。

クレンジングオイルを多量の水に滴下したときの外観とオイル滴の大きさ
(図3)

一般品と新マイルドクレンジングオイル

オイル滴の大きさ

結果

新マイルドクレンジングオイルは、水に触れるだけで自発的に分散する。また、洗い流すときにはオイルがとても小さく分散するため、皮膚に再付着しない。

角栓はエイジングの素になる

次に私たちが取り組んだのが、さまざまな毛穴の悩みに対する洗浄機能です。市場調査では、毛穴のお悩みはとても多くのお客様がお持ちであるにも関わらず、クレンジングによる毛穴の汚れ落ちの満足度は低いというギャップがあることがわかりました。そのギャップの原因を解明すべく、多くの方の毛穴の汚れ落ちについて調査を行ったところ、クレンジングによって角栓が落ちやすい人と落ちにくい人がいることがわかりました。
そこでさらに、それぞれの角栓を構成している成分を分析したところ、脂肪酸が多く含まれる角栓は落としにくい「頑固角栓」であることを発見※図4。つまり、脂肪酸が多いことで角栓が硬くなり毛穴に残りやすくなり、さらに脂肪酸がたまってしまうという悪循環が起こっていることがわかりました。

皮脂中の脂肪酸の割合と角栓除去率の関係(図4)

角栓除去率

【測定方法】

皮脂の脂肪酸を測定し、現行マイルドクレンジングオイルで洗浄し、角栓の除去効果を測定。

結果

皮脂中の脂肪酸の割合が多いほど、角栓除去力が低い。

角栓が落ちないことは、見た目だけの問題ではありません。角栓は皮脂と古くなった角層が混ざり合ってできたものです。ファンケルでは皮脂が肌に与える影響について詳しい研究を行っており、皮脂を構成する成分の一つであり、通常量では肌のバリア機能を保つための成分として働く脂肪酸が、過剰に発生すると肌にダメージを与え、炎症を起こす原因となることがわかりました。
つまり、角栓の残りは肌のエイジングの素になってしまうのです。

落ちにくい「頑固な角栓」を溶かすオイルを配合

そこで私たちは、普通よりも脂肪酸の割合が多く、クレンジングで落とし難い「頑固角栓」のモデルを人工的に作り、このモデルを溶かす機能に優れた油剤の探索を行うことで、頑固角栓をも溶かせるオイルを発見しました※図5。私たちが発見したこのオイルを配合して完成した新しい「マイルドクレンジングオイル」は、「頑固角栓」、「居残り角栓※2」、「隠れ角栓※3」のいずれに対しても有効であることを確認しました。

角栓モデル溶解試験の結果(図5)

従来のオイル

新オイル

【試験方法】

脂肪酸が多い角栓モデル(頑固角栓モデル)を作成し、従来オイルと新オイルを浸して溶解性を確認。

結果

従来のオイルよりも新オイルのほうが角栓モデル(頑固角栓モデル)を溶解することができる。

独自の技術が詰まった新しい「マイルドクレンジングオイル」

これらの技術を採用した新しい「マイルドクレンジングオイル」は、メイクや毛穴の汚れをきれいに洗い流すことができ、一方で肌の大切なうるおいは流さないため、洗浄後の肌の摩擦係数が小さくなること、つまり肌がつるつる、すべすべになることを確認しました。
また実際に4週間続けて使用した人と使用しなかった人の肌を比較すると、使用した人の肌では角栓が減少しながら肌の水分量が上がっており、乾燥による小じわが減るということも確認されました※図6

抗シワ試験結果(図6)

抗シワ試験結果

【試験方法】

新マイルドクレンジングオイル4週間使用/非使用群において、見た目のシワスコアを確認。

結果

新マイルドクレンジングオイルの4週間の連用により、シワスコアが優位に低下した。

私たちの新しい「マイルドクレンジングオイル」は、ファンケル独自の発想と研究の成果が詰まった製品です。これまで使っていただいていたお客様にも、さらに満足していただける製品になったと自負しています。そして今後も、さらなるクレンジング機能と使い心地の向上をめざして、研究を続けてまいります。

用語解説

  1. 国際学会IFSCC 2016 Congress ORLANDO FLORIDA
  2. 居残り角栓老化や酸化皮脂によりたるんでしまった毛穴に居残る角栓
  3. 隠れ角栓乾燥肌の方にも存在する、肉眼では見えない小さな角栓