肌・健康の測定技術

肌のキメを画像解析で評価する独自技術の開発

POINT

  • 肌のキメを画像解析によって評価する独自技術を開発しました。

肌のキメは皮膚表面の凹凸のことで皮溝(ひこう)※1と皮丘(ひきゅう)※2で構成されています。※図1 皮溝が浅く、皮丘が細かいと「キメ細かいきれいな肌」と言われます。化粧品販売カウンターではマイクロスコープでキメを撮影して肌状態を確認することがありますが、キメを総合的に評価するには、※図2のような目視スコア※3をつける方法が主流であり、人によって微妙に評価が異なることから専門判定員※4でないと正しく評価できないという課題がありました。
研究分野ではキメのレプリカ※5を採取して、三次元計測機器で表面の凹凸を正しく計測し、キメの状態を評価することはできますが、これらは手間がかかるため店頭でのカウンセリングには不向きです。
そこで今回、簡単に正しく肌表面を計測し、キメの様態を判定できる技術開発を行いました。

キメのマイクロスコープ画像を見ると感覚的に凹凸情報を読み取ることはできますが、数値で表すことはできません。そこでマイクロスコープ画像を変換することにより凹凸情報として数値化することを試みました。
まずマイクロスコープのカラー画像を256階調のモノクロ画像に変換処理を行いました。※図3-① 次に光学系の周辺減光などによる輝度ムラを表すシェーディング画像※図3-②を得て、各画素の輝度※6のデータからシェーディング画像により補正することで凹凸画像を得ました。※図3-③ 数値化された輝度=凹凸高さと仮定して、キメの状態を表す「(a)表面の粗さ」「(b)皮丘の細かさ」「(c)皮溝の方向性」の3つのパラメーター(指標)を求めました。※図3-④ この3つのパラメーターを複合的に計算することでキメスコアを算出しました。※図3-⑤
40名のキメ画像に対しあらかじめ専門判定員が目視スコアをつけ、さらに前手法によりキメスコアを算出したところ、目視スコアとキメスコアに高い相関があることがわかりました。※図4
これらの結果によりマイクロスコープ画像からでも凹凸情報=三次元的な要素を考慮しながら目視スコアと同じ精度のキメスコアを算出することに成功しました。

この研究は2014年から行っており、特許出願及び「映像情報メディア学会年次大会2016」で発表を行っています。本手法を用いてキメの状態を簡単に解析できる機器を開発しており※図5、今後は店頭でのカウンセリングへも導入していく予定です。

用語解説

  1. 皮溝皮膚を拡大したときに見られる細かい溝のこと。
  2. 皮丘皮溝と皮溝に囲まれた丘のこと。(図1の赤く囲んだ箇所)
  3. 目視スコア目視でキメの状態を1点から10点でスコア化し、点数が高いほうが良い。
  4. 専門判定員キメに関する知識があり、目視スコアを正確につけられる人。
  5. レプリカ肌表面のキメの写しが取れるシリコン剤のこと。
  6. 輝度モノクロ画像における256階調の色の濃淡のこと。明るいと輝度が高く、暗いと輝度が低い。