肌・健康の測定技術

透明化技術を応用した皮膚弾力の新発見

POINT

  • 皮膚の透明化技術を応用して弾性線維の立体構造を解析
  • 肌の弾力維持に関する新事実を発見

加齢によって、お肌の弾力が低下して、たるみができてしまう。それを解決する化粧品を設計するには、加齢によってお肌がどのように変化するのか正確に知る必要があります。私たちは、「生体の組織内部が見える透明化技術※1」を皮膚に応用して真皮の弾性線維の立体構造を解析し、加齢による変化についての研究を行いました。その結果、しわやたるみの原因となる加齢に伴う肌の弾力が、弾性線維の量の減少だけではなく、真皮内の構造的な変化が大きいという新事実を見出しましたのでお知らせします。

生体組織は血液中の赤色色素や脂質などが含まれるため、顕微鏡を用いて観察するのに必要な光が組織深部まで透過することができず、組織の内部構造の観察を簡単に行うことは不可能でした。しかし近年、組織中の血液などを脱色する「透明化試薬」が開発されたことによって、組織内部への光の透過性を向上させることが可能となってきています。私たちは、皮膚への透明化技術の応用を検討し、皮膚組織内部でも組織内の構造を観察することに成功しました※図1

そこで透明化試薬を用いて組織の細部を見えるようにした20代と60代の皮膚組織片を免疫蛍光染色法※2により染色し、共焦点レーザー顕微鏡により観察しました。その結果、真皮の弾性線維の立体構造を観察することに成功しました※図2。

さらに、弾性線維の立体構造画像を3次元的な画像解析を行い、弾性線維の数、面積、体積、直径、長さ、直線性を数値化解析しました。その結果、20代と60代では、弾性線維の数や面積、体積に違いはみられませんでしたが、20代に比べて60代の弾性線維は、線維束が太くなり、長さが短くなって直線性が少なくなる、という違いが認められました※図3

弾性線維は肌の弾力を司ることが知られ、加齢によって線維構造が乱れることが知られていますが、詳細は明らかではありませんでした。本解析の結果、弾性線維の「構造的な質の変化」が、肌の弾力低下に大きく関わることが新たに分かりました※図4

本研究で得た成果は皮膚内部の弾力性の解析に留まらず、皮膚内部構造の3次元的な解析技術として皮膚の研究全般に広く応用し、皮膚と神経や血管など皮膚科学の様々な知見を得るのに重要な技術になると考えています。当社では、今回の研究成果と従来の分子生物学的技術を組み合わせることにより、加齢やストレスによって起こる皮膚機能の低下の研究を進め、効果を持ったアンチエイジング化粧品を開発してまいります。

用語解説

  1. 透明化技術ヒトの生体の組織を光が透過されるように透明にする技術。これにより、組織の内部まで光が届くため、内部を観察することができる。
  2. 免疫蛍光染色法組織内にある観察したい特定の分子を光るように染色する技術。本試験では、弾力繊維が赤色蛍光を発するように染色を行っている。