効果を高める技術

ビフィズス菌配合サプリメントによる肥満改善を確認

POINT

  • ビフィズス菌を生きたまま腸まで届ける製剤を開発しました。
  • ビフィズス菌を配合したサプリメントに肥満を改善する作用があることを臨床研究で確認しました。

ファンケルでは、2006年頃より腸内細菌の様々な作用に注目し、健康維持・改善を目的とした研究を進めてきました。
肥満は、体脂肪が過剰に体内に蓄積した状態を指します。原因となる疾患による二次的な肥満といった場合もありますが、一般的には食生活や運動不足といった生活習慣の乱れが最大の因子として挙げられます。

しかし、近年の研究により、腸内細菌が肥満と深く関与している事が明らかとなってきました。肥満者の腸内細菌叢と痩身なヒトの腸内細菌叢では構成比率に特徴があることなどが報告されています(Ley RE, et al : Microbial ecology : human gut microbes associated with obesity. Nature 444 : 1022-1023, 2006)。

そこで我々は、腸内環境を整える作用が期待される2種のビフィズス菌※1を配合したサプリメントの開発に取り組みました。ここで、1つ課題がありました。ビフィズス菌を生きたまま腸に届けることが重要だと考えられていますが、ビフィズス菌は胃酸に弱い為、一般的な製剤(サプリメント)では腸に至るまでに死んでしまいます。試しに、特殊な加工をせずにカプセルにビフィズス菌を詰めて人工胃液に浸してみると、予想した通り、2時間後にはほぼ完全に死滅してしまいました※図1(灰)。そこで、我々は、ビフィズス菌を胃液から防御する為、2つの性質をもつ製剤を開発しました。1つは、カプセル内部への胃液の侵入を防ぐ性質で、もう1つは、カプセル内部を中性に保つ性質です。この製剤技術を用いて、先ほどと同様の実験をしたところ、ビフィズス菌の生存率を大幅に高めることに成功しました※図1(青)。

この特殊加工したビフィズス菌サプリメントの有用性を実際に臨床試験で確認することにしました。BMI※2が高めの50歳から69歳の方59名に、開発したビフィズス菌配合サプリメント、またはプラセボ※3を24週間摂取していただき、体重などの測定を行いました。その結果、ビフィズス菌配合サプリメントを摂取した群ではプラセボを摂取した群と比較して体重、BMI※図2、体脂肪率※図3、腹部総脂肪面積、腹部皮下脂肪面積のすべてが減っていることがわかりました。
一例として、ビフィズス菌配合サプリメントを摂取していたヒトの摂取前後の腹部の状態をCT検査※4により調べた画像を示します※図4
また、これらの被験者の腸内細菌叢を調べると、エネルギー消費を活性化することが知られている酪酸※5を産生する腸内細菌(Roseburia属)が増えていることがわかりました。これらの結果から、開発したビフィズス菌配合サプリメントを摂取することにより、腸内環境に良い影響を与え肥満を改善することが期待されました。

腸内細菌の研究対象は、肥満だけに限られたものではありません。良い腸内環境を形成することは、免疫、排便、肌の健康など様々な分野に有用だと考えられます。今後は、それらの分野も視野に入れた研究を進めてまいります。

なお、本研究成果は日本肥満学会誌(肥満研究Vol.22 No.2 2016 P133-144)に掲載されています。

用語解説

  1. 2種類のビフィズス菌ビフィズス菌BB536とビフィズス菌B-3の2種類のビフィズス菌を配合。ビフィズス菌BB536とは健康な乳児から発見されたビフィズス菌で腸内環境を整えることが報告されている。ビフィズス菌B-3も乳児から発見されたビフィズス菌で腸管でのバリア機能を強化し体脂肪を低減させることが報告されている。
  2. BMI 体格を表す指数であり、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出される。日本肥満学会の基準では18.5kg/m2以上25kg/m2未満が普通体重とされている。本研究では、高めの方(BMI:25kg/m2以上30kg/m2未満)を対象としました。
  3. プラセボ 有効成分が入った薬やサプリメントと同じ外見をしているが、薬やサプリメントとして効く成分が入っていない、偽物の薬やサプリメント。
  4. CT コンピューター断層撮影法(Computed Tomography)の略です。身体にエックス線を照射し、得られたデータをコンピューターで処理することによって身体の内部を画像化する検査です。
  5. 酢酸 短鎖脂肪酸の一種でほかには酢酸、プロピオン酸などがある。ヒトでは腸内細菌が腸内で食物繊維を発酵する際に産生される。