効果を高める技術

L-セリンに体内時計の調整強化機能を確認 生活リズムや時差ぼけの改善などに応用

POINT

  • L-セリン※1に現代社会で乱れがちな体内時計※2を調整する機能があることを九州大学との共同研究で明らかにしました。

人の身体には約24時間で刻まれる体内時計が備わっています。しかし現代社会では、不規則な生活や海外旅行による時差ぼけ、また夜間にパソコンやスマートフォンの光を見続けるなどの生活など体内時計が乱れがちです。体内時計が乱れると、がんや糖尿病、高血圧、肥満などのリスクが高まります。人の体内時計はもともと24時間より少し長いため、朝に太陽などの光を浴びることで毎日体内時計の調整を行っていますが、頻繁に生活リズムが狂うと調整が追いつきません。
 こで、ファンケルでは九州大学大学院農学研究院の安尾しのぶ准教授、九州大学大学院芸術工学研究院の樋口重和教授と体内時計の調節力を強める成分の探索と、その効果を検証する共同研究を行いました。

本研究は、20種類のアミノ酸を決まった時間に投与して実施しました。その結果、L-セリンに体内時計の光による調整力を強める機能があることを発見しました※図1。また、昼夜をコントロールして時差ぼけを誘導し、L-セリンを決まった時間に投与すると、新しい体内リズムに早く同調することも確認できました。これはL-セリンが時差ぼけなどで乱れた体内時計の調整力を強めることを示しています。
次に、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法※3にて、男子学生15名を対象に光による体内時計の調整力の試験を行いました。夜の就寝前にL-セリンを3g摂取した状態とプラセボを摂取した状態で、それぞれ朝の起床時に光を浴び、体内時計の指標となる唾液中メラトニン※4分泌を測定しました。その結果、摂取前日と比較してL-セリンを摂取した場合に25.9分、プラセボを摂取した場合に12.1分、メラトニンの分泌開始時刻が早められ、L-セリンを摂取した方が朝の光による体内時計の調整力を強めていることが分かりました(P<0.05)※図2。また、L-セリンを摂取すると翌日の日中に眠くなりにくくなる傾向も認められました。

本研究結果から、L-セリンを摂取することで、栄養学的に体内時計の乱れや時差ぼけの改善が期待できることが分かりました。またこの結果は、週末に3時間以上通常より多い睡眠時間で生じる「社会的時差ぼけ」の改善、シフトワーカー(交代勤務者)の健康管理、生活リズムの乱れによる不眠の改善、夜更かし時の体内時計調整など、幅広い応用が期待できるものです。

本研究成果は論文として、「Journal of Nutrition, 2017; 147: 2347-2355」に掲載されました。超高齢化社会に向けて、今後も皆様の健康長寿に貢献できるよう、健康食品の開発、機能性研究を進めてまいります。

用語解説

  1. L-セリン牛乳や肉、大豆などの高タンパク質の食品に含まれるアミノ酸の1種。睡眠の質を高める効果が知られている。
  2. 体内時計 睡眠、覚醒状態、ホルモン分泌、血圧などを調整する身体に備わる時計。昼夜リズムに合うように制御され、約24時間周期で刻まれている。
  3. 二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法プラセボとは有効成分が入っていない偽薬。各被験者が比較する全ての試験食品(今回はL-セリンとプラセボ)を割り当てられ、どの試験食品を摂取しているか被験者・研究者ともに状せられた状況で評価する。
  4. メラトニン 睡眠と関連したホルモンで、睡眠の2~3時間前に分泌が始まる。