効果を高める技術

マイオカインが精油で分泌促進されることを発見

POINT

  • 筋肉から出るホルモン「マイオカイン」が、皮膚細胞の活性を高め、肌のコラーゲン産生に寄与することを発見しました。
  • 植物由来の精油の中には、筋肉から出るマイオカインの量を増やす効果があることを発見しました。

ファンケルは、筋肉から分泌されるホルモン「マイオカイン※1」に着目し、皮膚組織との相互作用について研究を行ってきました。その結果、精油の中にある機能成分が「マイオカイン」の分泌を促進することを発見し、皮膚細胞の活性やコラーゲン産生に関わることについても確認しました。

皮膚線維芽細胞※2は真皮に存在し、肌のハリや弾力に重要なコラーゲンなどのタンパク質を産生して、たるみの予防を考える上でとても重要な細胞です。また、「マイオカイン」は筋肉から分泌されるホルモンで、糖尿病や肥満、動脈硬化、がんなどの予防といった、運動によって期待される健康増進効果の要因として近年、注目を集めています。真皮と筋肉の組織は、肌の内部で密接に関係すると考えられていますが、「マイオカイン」の皮膚機能に与える影響についてはあまり知られていません。そこで、ファンケルでは、運動不足や血行不良の環境を再現し、「マイオカイン」の分泌が皮膚細胞に与える影響について研究を行いました。

筋肉細胞由来の「マイオカイン」が皮膚細胞の活性とコラーゲンの産生の促進に関与することを確認

皮膚の線維芽細胞とコラーゲンから作成されるコラーゲンゲルは、人工的な培養真皮モデルとして使われ、このゲルが持つ収縮力は肌の弾力性の指標になることが確認されており、収縮率が高いほど肌の弾力が高いことを示します。そこでこのゲルを筋肉細胞が分泌した「マイオカイン」を含む混合培養液で培養し、その収縮率を確認しました。その結果、「マイオカイン」を多く含む混合培養液ほどゲルの収縮率が高くなり、「マイオカイン」が肌の弾力性維持に関わっていることが分かりました※図1。また同混合培養液で線維芽細胞を培養したところ、「マイオカイン」の含有量が多いほど細胞活性が高まり、コラーゲン産生量も増加することを確認しました※図2。これらのことから、「マイオカイン」は細胞活性を高めてコラーゲンの産生を促進することが分かりました。

「マイオカイン」の分泌を促進させる成分を発見

「マイオカイン」は筋肉の動きや温度などの適切な刺激によって分泌量が増え、逆に筋肉の動きが少ないと分泌量が減ると言われています。そこで、運動不足などで筋肉に蓄積する乳酸を用いて、その蓄積量が異なる環境を再現して「マイオカイン」の分泌を調べました。その結果、乳酸の濃度が高いほど分泌量が減少することが分かりました※図3。さらにこの関係性を用いて、「マイオカイン」の分泌を増加させる成分を探索しました。その結果、精油として化粧品の成分としても使用されるローズマリー油、カミツレ油、ニュウコウジュ油に、乳酸の蓄積により低下したマイオカインの分泌量を回復させ、さらに増やす効果まであることが分かりました※図4

現代社会は、スマートフォンへの依存が高いなど実際のコミュニケーションの減少や、食事における咀嚼回数の低下など、表情筋をあまり使わない生活習慣になっています。そのため、血行不良が起こり、肌の弾力性に重要な「マイオカイン」の分泌量も低下しているとみられます。今回の研究結果から、「マイオカイン」が肌の弾力維持とコラーゲンの産生促進に関係していることが分かりました。また、精油には香りによるリラックス効果だけでなく、機能成分として筋肉に直接働きかけることで「マイオカイン」の分泌を増加させる効果もあることが分かりました。一連の結果から「マイオカイン」の分泌量の増加は、肌のたるみ防止に役立つことが期待できます。

本研究の成果は、アラサー向け化粧品の肌のハリを保つ独自処方に応用されています。また、日本薬学会第138年会 (2018年 石川県金沢)で、「C2C12細胞筋管由来マイオカインが皮膚線維芽細胞に与える影響解析」として学術発表したほか、「マイオカイン産生促進用組成物」として特許も取得しております(特許第6572337号)。

今後も「マイオカイン」と皮膚機能の研究を進め、今までにない切り口からアンチエイジング効果を発揮する未来志向の化粧品開発に努めてまいります。

用語解説

  1. マイオカイン筋肉から分泌されるホルモンの総称。筋肉自身はもちろん、皮膚、肝臓、腎臓、脳など様々な臓器の生理機能に影響を与えることが近年注目されている。
  2. 皮膚線維芽細胞 真皮に存在し、コラーゲンやエラスチンなど、肌のハリや弾力に重要なタンパク質を産生している細胞。