効果を高める技術

脂肪酸結合タンパク「FABP5」が
コラーゲンの減少に関係することを発見

POINT

  • 脂肪酸結合タンパク「FABP5※1」について研究を行い、真皮のコラーゲンの減少メカニズムに関係していることを発見しました。
  • 「FABP5」を測定することで毛穴の目立ちや毛穴周辺にあるコラーゲンの減少を確認することが期待できます。

脂肪酸結合タンパク「FABP5(fatty acid binding protein5)」について研究を行い、「FABP5」が真皮にあるコラーゲンの減少メカニズムに関係していることを発見しました。「FABP5」は、当社の独自技術「角層バイオマーカー※2」の指標の一つでもあり、測定することができます。この技術を用いて肌の「FABP5」を測定することで、皮脂量の増加による毛穴の目立ちや毛穴周辺にあるコラーゲンの減少を確認することが期待できます。本研究は、日本皮膚科学会年会で「脂肪酸結合タンパク質FABP5の過剰発現による炎症と尋常性ざ瘡※3の関係性」と題し、ポスター発表をいたしました。

<研究背景>

加齢とともに、毛穴が開いて目立つことは、多くの女性が持つ肌の悩みの一つです。その原因は、真皮の弾力低下により、毛穴のたるみが生じるためです。一方、加齢による変化だけでなく、毛穴の開きには皮脂量の多さも関わることが分かっています。そこで毛穴の目立ちについて、毛穴で産生される皮脂の仕組みや存在するタンパク質に着目して研究を行いました。

<研究結果>
「FABP5」量が皮脂量に比例することを発見

肌の悩みの一つである毛穴が目立つことは、毛穴で産生される過剰皮脂の量と関係します。また、同じく過剰皮脂は、尋常性ざ瘡(ニキビ)の原因となります。そこで、ニキビの炎症で増加するタンパク質の一つである「FABP5」に着目し、皮脂量と「FABP5」量の関係性について調べました。その結果、皮脂量が多いほど、「FABP5」量が多くなることが分かりました※図1。すなわち、皮脂量が多いほどタンパク質が分泌され、毛穴が目立つことにつながるのではないかと考えました。

「FABP5」量の増加とコラーゲン減少の関係について確認

「FABP5」は、皮膚中の脂肪酸に結合して働くことが知られています。脂肪酸は、毛穴で産生される皮脂が皮膚常在菌によって分解されてできる物質です。そこで、次に脂肪酸と「FABP5」の産生の関係について調べまし た。表皮角化細胞※4への刺激となるLPS(リポポリサッカリド)※5と脂肪酸を添加して細胞を培養すると、「FABP5」量の増加が見られました。また同時に、コラーゲンを分解して表皮と真皮の境界部分にある基底膜を破壊させる「MMP9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)※6」も増加することが分かりました※図2。そこで次に、「FABP5」とコラーゲン分解の関係性を調べました。線維芽細胞※7に「FABP5」を添加すると、コラーゲンを分解する酵素の産生に関わるMMP1遺伝子※8が増加しました。また、Ⅰ型コラーゲンの合成に関わるCOL1A1遺伝子※9の減少も認められ、「FABP5」がコラーゲンの減少に関わることが分かりました※図3。 これらの結果より、皮膚の皮脂バランスが崩れて脂肪酸が増えると「FABP5」の量が増え、コラーゲンが減少することが分かりました。コラーゲンは、毛穴を維持するのに必要なものです。「FABP5」の量が増えることで、コラーゲンが減少し、毛穴が目立つ原因の一つとなる可能性が考えられました。

<本研究成果による製品開発と今後のアンチエイジング研究>

本研究成果を応用し、皮脂由来の炎症によるコラーゲンの減少を防いで毛穴開きを目立たなくする目的で、「FABP5」の量を調整する成分を開発し、今後発売するスキンケア製品に活かしてまいります。また本研究同様、「角層バイオマーカー」の指標を用いたアンチエイジング研究も進め、お客様に喜んでいただける独自性を持った製品開発やサービス向上に努めてまいります。

用語解説

  1. 「FABP5」表皮型脂肪酸結合タンパク質。脂肪酸に特異的、可逆的に結合し、脂肪酸の取り込み、輸送、代謝において働く。皮膚では角化や増殖、分化の亢進(こうしん)等に関わり、アレルギー性皮膚炎や乾癬(かんせん)で高発現することが知られている。
  2. 角層バイオマーカー 頬に貼ったテープ1枚から取れた角層のタンパク質の分析から、一人ひとり異なる肌状態や老化リスクを解析する当社の独自技術。
  3. 尋常性ざ瘡 炎症を伴う皮膚疾患のひとつ。いわゆるニキビのこと。
  4. 表皮角化細胞皮膚の表皮を構成する細胞。
  5. LPS(リポポリサッカリド) 細菌(グラム陰性菌)の細胞膜の成分。
  6. MMP9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)細胞外マトリックスであるⅣまたはⅤ型コラーゲンやエラスチンなどを分解する酵素。
  7. 線維芽細胞 皮膚の真皮を構成する細胞。
  8. MMP1遺伝子 細胞外マトリックスであるI、II、III型コラーゲンなどを分解する酵素であるMMP-1(マトリックスメタロプロテイナーゼ1)をコードする遺伝子。遺伝子にコードされている情報が、「転写」と「翻訳」によって、タンパク質となり、生体で作用する。
  9. COL1A1遺伝子Ⅰ型コラーゲン合成酵素をコードする遺伝子。