尿から鉄分の充足状態が判定できる方法を開発

ヘルスサイエンス研究センター

POINT

  • 健康状態を把握する測定技術として、鉄分の充足度を血液採取などで体を傷付けることなく、尿から簡単に測定する技術を開発しました。

株式会社古河電工アドバンストエンジニアリングおよびアドテック株式会社と共同で、健康状態を把握する測定技術の開発に取り組んでいます。この開発中の技術は、血液採取などで体を傷付けることなく、唾液や尿などの採取可能な試料中の成分を簡単に測定する技術です。すでに当社では、唾液に含まれている鉄分に関係するタンパク質「フェリチン」を測定し、鉄分の充足状態を判定する方法を開発しています。その技術を応用して尿にも微量に含まれる「フェリチン」を測定し、鉄分の充足状態を簡単に判定する方法を開発しましたので、実用化してお客様へのサービス提供に活用してまいります。

<開発の背景と目的>

鉄分は生命の維持にとって必要不可欠な栄養素です。世界では16~20億人が鉄欠乏と推定されていて、鉄欠乏は疲労感やさまざまな活動の低下を招き、イライラ感の増大や記憶力、学習能力、認知機能、運動機能などの低下を引き起こします。日本では、20~40代の女性の約50%が貧血もしくは潜在的な鉄欠乏状態であると報告されています。潜在的な鉄欠乏状態になると、体内に酸素を運ぶ血液中にあるヘモグロビンよりも先に、鉄分を貯蔵するために必要な「フェリチン」が減ることが分かっています※図 1
そこで当社は「フェリチン」を簡単に測定し、鉄分の充足状態を知った上で、食生活などの生活習慣の改善や維持をすることが重要であると考え今回の技術開発を行いました。

<開発方法>

株式会社古河電工アドバンストエンジニアリングと共同開発した、唾液中の微量な「フェリチン」を迅速に検出する蛍光イムノクロマト法※1を応用し、新たにアドテック株式会社と共同で測定技術を開発しました。

ステップ1:短時間の測定を可能にしたチップ※2の開発

測定時間を短縮するため、事前に必要だった作業を省略して使用できるチップを開発しました。その結果、尿をチップに滴下して15分後には測定が可能になりました※写真1

ステップ2:簡単に尿中の「フェリチン」を測定

軽量で持ち運びが可能な小型の蛍光イムノクロマト測定装置(QD reader)を使い、尿を滴下したチップを入れて測定ボタンを押すだけで※写真2、尿中の「フェリチン」の濃度に応じて蛍光の強度が変化することを確認しました。
「フェリチン」の濃度が高いほど蛍光の強度が上がることが分かり、簡単に尿中の「フェリチン」を測定できるようになりました※図2

ステップ3:尿中の「フェリチン」の測定結果から鉄分の充足率を判定

倫理的配慮の上、20代から60代の日本人男女約300人を対象に血液と尿を採取し、それぞれの「フェリチン」の濃度を測定しました。この結果、尿中の「フェリチン」の測定結果と血液検査による体内の鉄分の充足率の関係性が明確になり、鉄分の充足状態の判定が可能となりました。

<本成果による今後について>

尿を用いて簡単に鉄分の充足状態を測定する技術は、不足しがちな栄養素の情報をお客様にご提供できると 考えております。近日中に実用化させるとともに、お客様への健康増進に役立てるサービスにつなげてまいります。

用語解説

  1. 蛍光イムノクロマト法細管現象を利用した抗原抗体反応によって被験物質を測定する技術。古河電気工業株式会社が保有する新素材を利用して開発。
  2. 短時間の測定を可能にしたチップ 被験物質と蛍光粒子との結合反応部を一体化したチップ。