「チオレドキシン」が皮膚内部の線維構造を改善することを発見

ビューティサイエンス研究センター

POINT

  • 組織透明化技術と独自の3次元構造解析手法を用いて、生体内に存在するタンパク質「チオレドキシン※1」に皮膚の真皮内にある「コラーゲン線維および弾性線維の構造を改善する効果があること」を発見しました。

生体内に存在するタンパク質「チオレドキシン」に皮膚の真皮内にある「コラーゲン線維および弾性線維の構造を改善する効果があること」を新たに発見しました。 当社では、アンチエイジングの研究として加齢とともに生じるシワやたるみの原因解明を行っています。これまで、組織透明化技術※2と独自の3次元構造解析手法※3を用いて皮膚内部の構造を可視化し、皮膚内部の線維構造を構成するコラーゲンやエラスチンの加齢変化やその原因となる遺伝子を特定してきました。本研究では、変化した線維構造を改善する化粧品素材の探索を行った結果、抗酸化成分として知られる「チオレドキシン」に皮膚内部の弾性線維構造を改善する働きを確認しました。

<研究の背景と目的>

当社はこれまで、シワやたるみに関連するコラーゲン線維や弾性線維の構造変化について、組織透明化技術を用いた皮膚内部構造の可視化や、独自の3次元構造解析手法と遺伝子解析技術を組み合わせた最先端の研究を進めてまいりました。その結果、加齢により弾性線維が短く曲がってしまい、コラーゲン線維から離れてしまうなど、変化の詳細を明らかにしてきました。併せて、その原因がEMILIN-1 などの遺伝子と関係があることも確認してきました。それらを踏まえ本研究では、加齢によるこれらの変化を予防することや、改善できる素材の探索を目的として行いました。

<研究方法と結果>
■チオレドキシンが皮膚内部の構造改善につながるコラーゲン線維の増加と弾性線維の伸長を確認

摘出皮膚組織※4を用い、皮膚表面にチオレドキシンを塗布したものとしないもの(以降コントロールと表記)で、組織培養を行いました。培養開始から数日後に共焦点レーザー顕微鏡※5を使用して、皮膚真皮層のコラーゲン線維と弾性線維を立体的に観察しました。試験は同一の摘出皮膚組織から得た3検体で実施し、いずれも塗布しなかったコントロールに対して、塗布した皮膚組織ではコラーゲン線維が増えるとともに、弾性線維がまっすぐに伸長している様子が観察されました。これにより、皮膚内部の線維構造が改善されたことを発見しました。代表的な画像として、※図1(コラーゲン線維)および※図2(弾性線維)を示します。

<今後の展開>

本研究では、摘出皮膚組織にチオレドキシンを塗布することにより、皮膚内部のコラーゲンの量が増え、線維構造がまっすぐに伸びることを確認しました。チオレドキシンは、抗酸化能やトロポエラスチン※6の生産を促進することが知られていますが、皮膚内部でコラーゲン線維や弾性線維の構造を改善することを、今回発見することができました。従来ヒトの皮膚内部の弾性線維は、紫外線や加齢などで変性、喪失をしてしまうと、再構築されることは困難であると考えられてきました。しかし、本研究の結果から再構築を促進できる可能性が分かり、今後のシワやたるみを予防または改善する化粧品の開発やメカニズム解明に貢献することが期待できます。

用語解説

  1. チオレドキシン植物や動物の生体内に幅広く存在し、抗酸化能を有し、生体の防御機能に関わる重要なタンパク質。
  2. 組織透明化技術生体組織内部の色素を脱色し、屈折率を溶媒に合わせることにより組織を透明にする技術。
  3. 3次元構造解析手法組織の透明化により、3次元的に撮影した画像を画像処理や画像演算で形状の各パラメータを計測する方法。
  4. 摘出皮膚組織本研究で使用した摘出皮膚組織は、ヘルシンキ宣言の倫理的原則に基づき、倫理的配慮のもとに取得された皮膚を購入し使用しています。
  5. 共焦点レーザー顕微鏡焦点外の光の検出をピンホールにより防ぐことで、被写体の断面像の撮影をすることができる光学顕微鏡。細胞レベルのミクロな範囲を鮮明かつ立体的に撮影することができる。
  6. トロポエラスチン真皮に存在する線維芽細胞から分泌される弾性線維の素となるタンパク質。このタンパク質が線維状に連結することにより線維が形作られる。