角層中のタンパク質「IL-1RA」がシワ改善指標となることを確認

ビューティサイエンス研究センター

POINT

  • レチノイン酸クリームによるシワ改善と角層中のIL-1RA※1量の増加が連動し、角層中のIL-1RAがシワ改善の指標となることを確認しました。
  • より刺激性が少なくスキンケア成分として使用されるアスコルビン酸2-グルコシドにおいても、角層中のIL-1RA量が増加して老化の兆候が改善される傾向が確認されました。

角層バイオマーカー※2の一つである「Interleukin-1 Reseptor Antagonist (以下、IL-1RAと表記)」のメカニズムを解明する研究を進めています。その中で、角層中のIL-1RAが加齢とともに減少し、さらに40代以降の皮膚弾力性に相関が確認され、IL-1RAが老化の原因となる細胞増殖の停止を防ぐメカニズムに関与していることをすでに発見しています。
今回新たに、シワの改善効果が確認されているレチノイン酸を配合した皮膚科処方のクリーム(以下、レチノイン酸クリームと表記)を連用試験した結果、レチノイン酸クリームによるシワ改善と角層中のIL-1RA量の増加が連動し、角層中のIL-1RAがシワ改善の指標となることを確認しました。さらに、より刺激性が少なくスキンケア成分として使用されるアスコルビン酸2-グルコシドにおいても、角層中のIL-1RA量が増加して老化の兆候が改善される傾向が確認されました。
なお、本内容は第38回日本美容皮膚科学会総会・学術大会にて、優秀演題賞を受賞しました。

<研究背景・目的>

IL-1RAは身体の炎症時に増加し、正常化させる抗炎症性サイトカイン※3で、細胞の増殖を促進するタンパク質です。当社はこれまで、角層中のIL-1RAは加齢とともに減少し、肌の弾力性と正相関を有することを発見してきました。これらの知見から本研究は、角層中のIL-1RAが、ヒト皮膚のシワの増減の指標となりえる可能性を検討することを目的としました。

<研究方法と結果>
シワ改善効果とIL-1RAの増加が連動することが分かり、角層バイオマーカーの指標に

健常皮膚を有する11名の頬部に0.1%レチノイン酸クリームとプラセボクリーム(レチノイン酸が配合されていない同一基剤のクリーム)を半顔ずつ8週間、朝晩のスキンケアで使用し、使用前後における皮膚状態を測定しました。測定項目は、ANTERA3D※4による鼻唇溝計測、角層中のIL-1RA量、経皮水分蒸散量です。その結果、レチノイン酸クリーム使用部位は0週(使用開始週)と比較し、8週目で鼻唇溝の深さは減少し※図 1 図3、IL-1RAは増加しました※図 2。プラセボクリームは、ともに大きな変化が見られませんでした。
これらの結果から、レチノイン酸によるシワ改善とIL-1RAの増加が連動していることが分かり、角層バイオマーカーによるシワ改善の指標として使用できることを確認しました。

同時に、レチノイン酸クリーム使用における経皮水分蒸散量は0週(使用開始週)から比較して、増加していました。蒸散量の増加は、バリア機能の低下などが要因であると考えられます※図 4

アスコルビン酸2-グルコシド配合の美容液使用でIL-1RAの増加とキメや鼻唇溝が減少老化兆候の改善に期待

当社はこれまでに、スキンケア成分として汎用されるアスコルビン酸2-グルコシドが皮膚細胞でIL-1RAを増加させることを確認しています。今回、アスコルビン酸2-グルコシドを配合した美容液を11人の頬部に12週間、朝晩のスキンケアで使用し、使用前後の皮膚状態を測定しました。測定項目は、角層中のIL-1RA量、レプリカのキメの粗さ、ANTERA 3Dによる鼻唇溝計測、経皮水分蒸散量です。
その結果、IL-1RAが増加した人は、0週(使用開始週)と比較してキメの粗さや鼻唇溝のくぼみ指数※5が減少していることが分かりました※図 5
このことから、IL-1RAの増加は、老化兆候の改善に連動することが期待できます。なお、アスコルビン酸2-グルコシドの使用による経皮水分蒸散量の増加は観察されませんでした※図 6。レチノイン酸クリームの結果と比較すると、アスコルビン酸2-グルコシドは肌に負担なく使用できる成分であると考えられます。

<本研究成果による製品開発>

本研究成果で、IL-1RAがシワなどの老化兆候の改善に寄与することが確認されました。また同時に、肌への負担が少なく、IL-1RAを産生するスキンケア成分のアスコルビン酸2-グルコシドがシワなどの老化兆候の改善に有効な素材となることも確認できました。これらを踏まえて新たな製品開発をすることで、長くお客様にご愛用いただけるアンチエイジング化粧品に寄与できると考えています。

用語解説

  1. IL-1RA(Interleukin-1 Reseptor Antagonist)身体の炎症時に増加し、正常化させる機能を持つ抗炎症性サイトカインで、細胞の増殖を促進するタンパク質。
  2. 角層バイオマーカー皮膚に貼った1枚のテープから取れた角層のタンパク質を分析し、一人ひとり異なる肌状態や老化リスクを解析する当社独自の測定技術。
  3. サイトカイン細胞から分泌されるタンパク質であり、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称。
  4. ANTERA 3D光学技術により皮膚表面画像、テクスチャーやシワ、へモグロビンやメラニンの変化を2D・3D画像で再現する肌測定機器。
  5. 鼻唇溝のくぼみ指数基準面より低くなっている点の平均の深さとなり、測定部位の皮膚基準面よりも低い部分の平均の深さを示す。