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研究員の想い

「キンミズヒキ」に
老化細胞除去機能があることを発見

ファンケル総合研究所 基盤技術研究センター
次長 兼 機能探索第一グループ 課長

渡邉 知倫

2025年4月時点

・キンミズヒキとの出会い

ファンケル総合研究所では着任以来、主に加齢と脳の関係について研究を行ってきました。当時、認知症への対策が高齢化社会での大きな課題となっていたため、脳機能への有効性を示す成分を探索することが急務となっており、私の使命と感じていました。 当研究所の食品素材ライブラリーには、実に4,000種類以上の植物のエキスや化合物の候補成分が存在しています。当初はたった一人で有効成分の探索を開始しましたが、「この中から何か見つかるかも」と思うと胸が高鳴り、日々、探索実験に明け暮れていました。外部の大学とも連携しつつ、1回の実験で多くの成分を評価できるように工夫し、効率化を図りましたがそれでも膨大な作業により、腱鞘炎になりかけました。そして、探索実験や再現性検証などを重ねた結果、ついに脳機能への作用を示すキンミズヒキにたどり着きました。 キンミズヒキに関する様々な研究を重ねていく中で、脳機能への作用以外にも、様々な加齢に伴う体の変化への作用を実感することがあり、いろいろな作用がありそうだとピンときました。長年、研究に携わってきた者の勘とでも言いましょうか。そこから脳機能へのアプローチ以外にも着目したキンミズヒキの研究を進めることとしました。

・キンミズヒキの大発見

キンミズヒキ

キンミズヒキに着目し、様々な角度から研究を進める中で、キンミズヒキは様々な可能性を秘めていると感じました。その中で、老化の根本原因として、最も注目されている“老化細胞除去”に着目し、研究を進めることにしました。 加齢に伴って増加する老化細胞は、細胞として本来備わっている機能が失われてそこに存在するだけでなく、周囲にある正常な細胞の機能を失わせる物質(SASP因子:senescence-associated secretory phenotype因子)を分泌し、体の機能を低下させるなどの負の影響を及ぼします。そのため、加齢に伴って増加する細胞が蓄積していくことで、加齢に伴う様々な体の変化を生じやすくなり、如いては健康へも影響します。 既存論文を参考に実験方法を調整しながら検証した結果、キンミズヒキに老化細胞除去機能があることを発見しました。 さらに、キンミズヒキの中に含まれるどの成分に機能があるのかを検討しました。丁寧に根気強く試験を重ねた結果、キンミズヒキに含まれる“アグリモール類”にこの除去作用があることを突き止めました。

・キンミズヒキの老化細胞への作用

ー アグリモールBによる
老化細胞除去機能を確認 ー

キンミズヒキの老化細胞への作用
  • *この実験ではキンミズヒキ由来のアグリモールBではなく、試薬を使用
  • 出典 : Watanabe T, et al. Food Bioscience.2024;59:103903.より改変

キンミズヒキは日本や中国に生息し、一部の地域ではお茶としてや炒めものやてんぷらなどで食されている身近な植物です。キンミズヒキに含まれるアグリモール類 という成分に老化細胞を除去する作用があることを確認しました。また、アグリモール類の濃度が高いほど老化細胞除去作用も高まることがわかり、臨床的、社会的意義は大きいと考えます。

・キンミズヒキの可能性

キンミズヒキの可能性

老化の要因は12の特徴に分類され、中でも老化細胞は重要な因子の一つだと考えています。この細胞を除去することで様々な加齢に伴う問題を改善し、寿命が伸びる可能性が多くの研究で示されていますし、老化細胞はその他の要因と密接に関わっていることも報告されています。 キンミズヒキはその他の要因に対して作用があるのかを確認したいと考えますし、加齢に伴う様々な体の変化や悩みに対しても検証していきたいと考えています。今後、キンミズヒキのもつ更なる可能性を研究により明らかにし、老化に向けたアプローチを続けてまいります。