・そもそも老化って??

近年、世界的に老化の研究が盛んに行われ、老化のメカニズムが解明されてきました。それに伴い、老化は病気である」という概念が広まってきました。しかしながら当たり前に「老化」と言っていますが、老化とは具体的にどのような状態なのか?老化は測定できるものなのか?という疑問が浮かんできます。特に老化にアプローチする食品を開発したいと思っても、老化の状態をどのように評価すればいいのか?老化に対する影響はどのように証明すればいいのか?という問題があります。
誰しも年を取れば体感として老化を感じており、それは足腰が弱ってきたという症状であったり、疲れやすくなってきたという実感だったりします。また、同じ年齢でも若々しい人、老けた人と、人によって老化の度合いに差があることも感じています。しかしながら、足腰が弱ってきたことが老化なのだとすれば、膝が痛くなったら老化?膝が痛くなければ老化していない?膝の痛みは老化の症状の一つかもしれませんが、それだけで全身の老化度を適切に判別できるわけではないことは言うまでもありません。では一体何を見れば、何を測定すれば、全身の老化度を判断できるのか、それが老化研究の大きな課題でした。
・老化度測定の難しさ
世界中の研究者も考えることは同じで、老化度を測定する手法を確立しよう、老化を科学的に定義しようと、様々な研究が進められています。学術論文を数多く調べてみると、既に老化度測定法はいくつか報告があり、その測定に使われているサンプルは様々なものでした。しかしながら測定法の多くは、病気の患者さんから採取された臓器を用いた手法であったり、10以上の測定項目を測って複雑な計算式から老化度を算出したり、定期的に測定を繰り返したりと、侵襲度の高さや評価の複雑さ、測定回数の多さ等がネックとなり、短期間に老化度を測定し、老化への作用がある食品を見出すには、採用できない手法ばかりでした。そこで、既報の測定法の情報を元に、私たちが目的とする機能素材の開発に適した手法の確立に取り組みました。
・老化細胞定量法の確立

全身の老化度を測定する指標として我々が着目したのは、細胞レベルでの老化です。体を構成する細胞1つ1つには老化した細胞とそうでない細胞が存在していることが分かっており、その老化した細胞を数えることが出来れば、老化度を評価できると考えました。そして簡便に、かつ全身の老化を反映していると考えられている細胞を測定する方法として、血液中の細胞の評価に挑戦しました。論文情報等を参考に、血液中から細胞を単離し、フローサイトメーターと呼ばれる機械を用いた測定法の確立に着手しました。この機械は細胞を1つ1つ高速で測定することが可能な機器で、老化した細胞とそうでない細胞の判別に適しています。
我々が測定しているリンパ球と呼ばれる細胞の大きさは直径約10 μm(マイクロメートル)ですが、お米一粒の長径はだいたい5mmですので、その差はなんと500倍です。もちろん目視では判別できないような、お米の1/500の大きさの細胞を1個ずつ、1人のサンプルにつき10万個測定することができる機械です。この機器の使用に熟練した知識と技術を持つ研究員(機能探索第二グループ 野口 真行)と共に、数多くのサンプルの測定を繰り返し、ようやく測定法の確立にたどり着きました。この手法が確立できたことにより、キンミズヒキの機能の評価をヒトで確認することが可能となりました。この手法の確立~キンミズヒキの評価の過程で、実に数千サンプルの測定を行ってきました。
ー 日本人の老化細胞量が加齢とともに増加することを確認 ー

- 概要:確立した老化細胞定量法を用いて、ヒトの血液中のリンパ球(T細胞)における老化細胞の割合を測定。
- 結果:20代から60代の日本人107人(男性:53人、女性:54人)の老化細胞を定量し、加齢とともに老化細胞の割合は増加していることを確認。
・今後の展望
今回確立した老化度測定は、数 mLの採血だけで老化度を測定できる画期的な方法です。しかしながら老化は非常に複雑で様々なことが起きている現象故に、この測定方法だけでは全ての老化現象を捉えられているわけではないのかもしれません。キンミズヒキを始めとした老化に対する作用をもつ素材の全ての作用を見つけるためにも、さらなる老化測定法の開発を続けていきたいと考えています。