Health08若い研究者のチャレンジ
と独自技術の融合

「DHA&EPA」の開発

  • 機能性食品研究所今井 理恵
  • 機能性食品研究所足立 知基
  • ヘルスサイエンス研究センター久保田 喜子

2018年3月時点

質の良いDHAをより効率的に体内へ届けるサプリメントを追求

体内ではほとんど合成されない「必須脂肪酸」であることから、食事で摂取する必要があるDHA。魚介類に多く含まれていることが知られていますが、食生活の変化によって日本人の摂取量は年々減少しており、不足する方はサプリメントなどで補う必要があると考えています。
私たちは、ファンケルを代表する製品の一つである「DHA 乳化吸収型」をリニューアルし、独自の成分を配合することでDHAの鮮度を保ちながら、吸収しやすく、必要な量を補うことができるサプリメント「DHA&EPA」を開発しました。

主担当は、入社3年目の研究員

今井研究員

私たちは、リニューアルにあたり市場調査を実施し、DHAサプリメントに求められているのは、「DHAの含有量と質の良さ」という結論にたどり着きました。 そこで、お客様が求めている
・DHAの量を増やし、不足する分を補うこと。
・DHAの酸化を抑えることで、より質の良い状態で体内に届けること。
・DHAが効率的に吸収されること。
の3つをリニューアルのテーマとして開発を始めました。

このプロジェクトの主担当を任されたのが、現在入社3年目の今井理恵研究員。2年前の研究所配属後、初めて任された大きなプロジェクトに「自分にできるのか、すごく不安でした。しかし、新人でも人気の高い製品を任せてもらえることが嬉しく、お客様に喜んでいただける製品を作ろうと思いました。」と言います。

先入観にとらわれないチャレンジで発見した
「オリーブ葉エキス」の高い抗酸化力

今井研究員

DHAには目や記憶に対する作用など、様々な機能があります。しかし、DHAは酸化されやすいだけでなく、酸化されたDHAは他の脂質を酸化してしまいます。そのため、DHAを酸化から守る必要があります。
そこで、最初に取り掛かったのが、DHAの酸化を抑制する抗酸化物質の検討でした。緑茶に含まれるカテキンなど20種類以上の抗酸化成分を検討する中、彼女が目をつけたのが「オリーブ葉エキス」。すでにファンケルでも、美白成分として使われていた「オリーブ葉エキス」は、「栄養の宝庫」とも呼ばれ、抗酸化作用の高い成分である「ヒドロキシチロソール」を豊富に含む一方で、水溶性であることから魚油に溶けにくく、あまり良い結果は得られないだろうと考えていたと言います。
実験でも、試験管内では溶けにくかったのですが、結果はなんと、ほかの成分を圧倒する抗酸化作用を示したのです※図1

DHAに対する各抗酸化素材の酸化抑制作用の比較(図1)

DHAに対する各抗酸化素材の酸化抑制作用の比較

【実験方法】

DHAに各素材を加えて50℃で1週間保存した後、酸化が抑えられているかどうか測定しました。(in vitro)

結果

オリーブ葉エキスが酸化を最も抑えていることが分かりました。

「意外な結果で、正直なところ驚きました。」 先入観にとらわれることなくチャレンジした若い研究者が出した大きな成果でした。

さらなる検討の結果、オリーブ葉エキスは魚油の臭いや色の変質を防ぐことを発見し、体の組織中のDHAに対しても酸化を抑える力が強いことを、試験管内の試験にて確認しました※図2
この魚油とオリーブ葉エキス(ヒドロキシチロソール)の組み合わせによる魚油の変質抑制は、特許を出願中です。

組織中DHAの酸化抑制作用(図2)

組織内DHAの酸化抑制作用

【実験方法】

組織に活性酸素のような働きでDHAを酸化させる試薬、オリーブ葉エキスを入れ混合し、37℃で24時間保存した後、DHA量を測定しました。(in vitro)

結果

オリーブ葉エキスがあると、DHA量が減少しませんでした。組織中DHAの酸化が抑えられることを確認しました。

DHAの吸収率をアップさせる自己乳化製法

次に取り組んだのが、自ら乳化することでDHAが体内に効率よく吸収される「自己乳化製法」でした。この製法により、吸収する力が弱くなってしまった方でも、DHAを効率よく摂っていただけます。従来製品にも取り入れられていた「自己乳化製法」ですが、DHAの含有量を500mgに増やしたことで、従来と同じ処方ではカプセルが大きくなってしまうか、1日の摂取目安量が増えてしまいます。カプセルが大きくなり、目安量が増えると、飲みにくいと感じられるお客様もいらっしゃいます。お子様からご年配の方まで摂っていただくためには、カプセルサイズを大きくせず、目安量を増やさないことも課題でした。

久保田研究員

そこで、久保田研究員や先輩研究員の協力により、吸収効率を落とさずに乳化に必要な成分を最小限にする処方を発見。この処方にオリーブ葉エキスを加えた状態で、血漿中のDHA量が増加することを実験で確認しました。その結果、カプセルのサイズは従来と変わらずに、吸収性も優れた製品を実現しました。自己乳化製法の研究を長年重ねてきたファンケルのノウハウが生きた瞬間でした。

最後に待ち構えていた壁「製剤化」

あと一歩のところまで完成に近づいたリニューアルでしたが、最後に大きな壁が待ち構えていました。
主成分の処方も決まり、意気揚々とカプセルが時間内に溶けるか確認する品質試験に進んだある日、予想もしていなかった問題が発生したのです。
「溶けるはずのカプセルが、溶けませんでした。何が起こったのか理解できずに、同じことを繰り返しましたが、結果は変わらず。本当に焦りました。」

足立研究員

今井研究員は、ともに開発に取り組む製剤化担当の足立研究員に相談。一緒に配合している成分の化学式を眺め、原料について調査したところ、カプセルの原料であるゼラチンが、オリーブ葉エキスと反応を起こすことでカプセルが溶けなくなってしまったことがわかったのです。
そこで急遽、カプセルの原料をゼラチンから植物由来成分に変更し、問題は解決しました。

ついに完成した新しい「DHA&EPA

こうして生まれたファンケルの新しい「DHA&EPA」は、DHAの含有量をアップしながら、新しい抗酸化成分「オリーブ葉エキス」によりDHAの酸化を防止。さらに、魚油の劣化臭も低減し、自己乳化製法による吸収性の向上など、皆さまに満足していただける製品になったと自負しています。
今後も、若い研究者による新しい発想と、ファンケルが長年培ってきた独自技術を融合させることで、より皆さまのニーズに応えるサプリメント開発を続けてまいります。