プロジェクトストーリー
10年ぶりの新商品『プレミアムカロリミット』。3つの売り場が1本につながるまで
社長賞を受賞したヒット商品の、コミュニケーション戦略

2024年10月、カロリミットシリーズに新商品が加わった。ここに至るまでのプロジェクトは、その後社長賞を受賞している。ただし評価されたのは売上の数字だけではない。直営通販・直営店舗・ドラッグストアなどの流通チャネル。それまで3つの売り場は別々の理屈で動いてきた。それを1つにまとめるところにこそ、このプロジェクトの本質があった。
Productストーリーのテーマ商品

カロリミットシリーズ『プレミアムカロリミット』
『カロリミット』『大人のカロリミット』に続く、サプリメント剤形としてシリーズ3番目の商品。より多くのお客様ニーズに応える商品として、シリーズの中で最も多くの機能をもつ。カロリミットシリーズ史上最強の機能性表示食品。
Memberメンバー
取材当時の情報になります。
カロリミットブランド担当
総合職
健康食品事業本部
ダイエット・ビューティブランド
中 彩乃
2014年中途入社

流通営業担当
総合職
流通営業本部 流通第一営業部
有賀 耕平
2014年中途入社

直営店舗担当
総合職
オムニチャネル本部 デジタル推進部
奈須 龍助
2007年新卒入社

通信販売担当
総合職
オムニチャネル本部 販売企画部
内田 佳那
2000年新卒入社
Chapter 01変化の先を行くと、自分たちで決めた

積み上げた信頼は確かにあった。ただそれだけでは届かない場所が、売り場に生まれはじめていた。
カロリミットシリーズは、抑制系・燃焼系と呼ばれるダイエット市場で長く愛用されてきた。市場を牽引する存在であり続けられたのは、食事を楽しみながら健康も大切にしたいお客様に寄り添う商品設計と、発売から20年以上も積み上げてきた安心と信頼があったからだ。しかし、時代の流れは速い。カロリミットはいつの間にか、昔流行ったものとして見られるようになっていた。ダイエットの方法は、自分に合うものを探して切り替えながら続けていく人が多い。売り場で選ばれるのは、多くの場合、目新しい商品だ。
売り場の環境も大きく変わっていった。パッケージに機能がはっきり書かれるようになり、お客様はどれだけ機能を備えているかを見比べて選ぶ。棚は類似した商品で埋まっていった。「どれも似ていて、自分に合うものが分からない。それなら最近SNSで話題になっているものを試してみよう」。そう思われた時、昔からある安心と信頼、認知度の高さだけでは、選ばれなくなってしまうのだ。

ブランド担当中さん
最近は思っている以上に市場の変化が速いです。ドラッグストアに行くたびに新商品が次々と出てきますし、通販サイトを開けば多くの会社が類似の機能を備えた商品を出品しています。このような競争環境では、長くご愛用いただいてきたブランドでさえ埋もれてしまうリスクがあり、変化に適応し続ける新たな挑戦が必要だと思いました。
Chapter 023つの売り場を同じ方向に

売り場が変われば伝わり方も変わる。同じ言葉が、ある売り場では武器になり、別の売り場では逆に働く。
お客様へのインタビューを重ね辿り着いた答えは、カロリミットシリーズで最も多くの機能を備えた最強商品の投入だった。コンセプトは決まったが、すぐに次の課題に直面した。ファンケルには販売チャネルが3つある。直営通信販売、直営店舗、そしてドラッグストアなどの流通店舗だ。お客様はそれぞれ異なる。直営通信販売には定期便で何年も同じ商品を受け取ってくださるお客様も多い。直営店舗にはスタッフと直接つながりを育んできたお客様がいる。一方で、ドラッグストアでお買い求めいただくお客様には初めて商品に触れる方も多い。
3つの売り場を持つことはファンケルの強みだ。ただし、それぞれ特徴が異なれば、戦い方も変わる。ドラッグストアでは新商品が出たと気づいてもらえなければ何もはじまらない。一方、長期にわたり同じ商品を使い続けているお客様も多い通販では、シリーズ最高の新商品とアピールすればどう聞こえるか。「いままで使っていたものは機能が劣っていたのではないか」。同じ言葉が、ある売り場では必要なメッセージとなり、別の売り場では積み上げてきた信頼を崩しかねない一言になる。チームは、商品をどう売るかの前に、役割をどう分けるかを話し合った。それぞれの売り場が何を目的とするのか。最初にそこを揃え、ぶれることなく全うする。ここから、新商品の効果的なプロモーションが生まれることになる。

直営店舗ではスタッフが説明し、通販サイトでは言葉や画像で伝えられます。一方、私たちの主戦場はドラッグストアで、お客様ご自身で商品を探していただく場所。説明の機会もスペースも限られています。

通販の役割はシリーズ3商品の違いを正しく知っていただいて、自分に合うものを選べる状態をつくることでした。新商品だけをおすすめすることではありませんでした。
Chapter 03自分に合うものを選べる形にする

機能を並べるだけでは、伝えきれないものがあった。
もっともシンプルな商品紹介は、カロリミットシリーズ3種類の機能の違いを一覧にした表をつくることだ。新商品には機能がずらりと並び、誰が見てもどれが高機能かは一目瞭然だ。しかし、お客様にとって高機能サプリメントが必ずしも最適なサプリメントであるとは限らない。大事なのは、お客様が自分の目的を叶えるために、自分に合った商品を見つけられるようにすることだ。価格差も大きい3つの商品を、上でも下でもない形で見せる。問題は、どうすれば自分たちの届けたい思いが正確に伝わるかだ。
内田は機能の違いを伝えるだけでなく、どのようなニーズやライフスタイルの方に合っているのかを示す方向へ切り替えた。具体的なユーザー像をイラストで見せるなど、工夫を重ねてツールをつくっていった。発売1ヶ月前、常連のお客様のもとに届いたDMには、シリーズ3商品が横並びで表示されていた。新商品だけをすすめることはしない、という案内だ。

機能を列挙すれば各商品の順位付けにも見えかねない。商品企画担当と議論を重ねた末に、各商品の特長をそれぞれ表現することを選びました。お客様ご自身で判断できる形をつくることが最もファンケルらしい提案だと思ったのです。
奈須は直営店舗で、機能を伝えるだけに頼らない店頭づくりを考えた。単なる価格や機能の紹介ではなく、上質感のある食事シーンのビジュアルから入る。カロリミットの中でもワンランク上の選択肢であることを、機能の多さではなく、その世界観で伝えることにこだわった。加えて、店舗に来られたお客様が自分に合ったものを見つけられるよう、伝え方について商品企画担当と議論を重ね、さまざまなニーズやライフスタイルに合わせて提案できるカウンセリングトークを練り上げていった。

直営店舗は、人が人に直接伝えられる場所になります。ゆえに、新商品が出るたびに、お客様が何を選べばいいのか、スタッフが何をすすめればいいのか迷ってしまうものです。だから伝え方そのものを、スタッフトレーニングの担当者と一緒につくっていきました。
Chapter 04ダイエット売り場を、もう一度活気づける

商品を置いてくださいと頼むのではない。売り場全体をどう見せるかを提案した。
この時期、ドラッグストアに向かう流通担当の営業チームは、異なる課題を抱えていた。数多くの企業の商品が並ぶドラッグストアで、粒タイプとして10年ぶりに登場したカロリミットシリーズ最強の『プレミアムカロリミット』をどう展示すれば興味関心を惹きつけられるか。価格はシリーズで最も高い。「難しい」。流通担当者たちの脳裏に真っ先に浮かんだ言葉だった。
仕入れを決めるドラッグストアのバイヤーは、売り場全体を見て判断している。そこで、自社商品だけでなく、売り場全体に役立つ提案へと切り替えた。この時期のダイエットカテゴリーの売り場をどう組み立てるか、他社商品も含めて提案する。ちょうど市場全体が逆風に晒されている時期でもあった。この売り場がもう一度活気づくかもしれないという期待ごと、提案していった。通路に面した棚を確保し、7日分のお試し商品もつくって、まず手に取ってもらう入口を設計する。加えて商品企画担当者が商談に同行することで、一丸となって想いを伝える。ファンケルにとって初めての試みだった。営業を経験したことのない中が、バイヤーの前で商品の背景を語り、営業と共に現場を回った。

自社商品のことしか考えない自分勝手なセールストークは通用しません。ダイエット商品の棚をどう組めばお客様の目に留まりやすいかなど、他社商品も含めて考え提案することで、バイヤーさんと同じ目線で話ができるのだと思います。

ブランド担当中さん
私は営業部に所属した経験がなく、現場のことがまったくイメージできていませんでした。だから商談に同行させてもらい一緒に店舗を回ることで気づきがありました。「この商品はこう並んでいるんですね」と話しながら現場を見ることで、視野が広がっていくんです。この経験をこの商品だけの特別なことにしてはいけないと直感で思いました。
Chapter 05離れていた売り場が1つになっていく

社長賞受賞の理由は、商品が売れたことより、進め方が変わったことだった。
計画は達成され、プロジェクトには社長賞が贈られた。ただし評価の中心にあったのは、商品のヒットそのものではない。3つの売り場がそれぞれの想いを持ちながら、目指すところは1つということ。新商品を届けることだけではなく、カロリミットというブランド全体の価値を上げること。各チャネル単体で動くのではなく、各々がどう役割を担うのか全体で設計すること。ここまでしっかり連携して同じ方向を向いて取り組めたプロジェクトは初めてだった。実際、組織はその後、売り場ごとに分かれていた部署を1つに束ねる形へと改編されはじめている。次に新商品を出す時、営業と事業部が事前にタッグを組むことは、もう特別なことではない。

ブランド担当中さん
売り場ごとではなく、会社全体でどうお客様と向き合うのか、そのきっかけをつくれたと思っています。今は組織も変わり、ブランドとしてお客様とどう接点を持つのか、その手段として通販や店舗、流通があるという考え方になってきたと思います。
Epilogueエピローグ
もっとも、答えの出ていないことは残っている。お客様が3つの商品の中から自分に合うものを、どうすればより分かりやすく選べるようになるか。それは今も調べては試し、何度も組み直している最中だ。奈須は言う。「過去の成功事例にそのまま当てはめるのではなく、その時の環境やお客様に合わせて最適なつながりを考え、全員で選んでいく」。変えたのは商品ではなく、向き合い方だった。


