事業等のリスク

リスクマネジメント体制


2022年5月に、内部統制の適正性の確保と全社的なリスク・コンプライアンスマネジメントの向上を図ることを目的に「コンプライアンス委員会」・「内部統制委員会」を統合し、「グループリスク・コンプライアンス委員会」を発足させました。この「グループリスク・コンプライアンス委員会」、「サステナビリティ委員会」および「グループ経営会議」がそれぞれ関係するリスクを管理します。

リスク特定プロセス

「VISION2030」および「第3期中期経営計画前進2023」に基づき、期初に、これらの委員会・会議体および関係部門で検討のうえ「事業等のリスク」の抽出を行い、影響度および緊急度を分析して各リスクの重要度を評価しております。抽出・分析されたリスクは取締役会へ報告し、取締役会でファンケルグループの重要なリスクを決定しております。決定した重要なリスクへの対応状況についても適宜取締役会へ報告し、実効性を取締役会が検証し、解決していないリスクについては、さらなるアクションを行うことで、リスクへの対応策をレビューしております。また、決定した重要なリスクについても、適宜見直しを行っております。

事業等のリスク
影響度:損失・操業停止期間・信頼の失墜の3項目を総合的に判断しSまたはAに分類
緊急度:緊急性のある対策の必要性について高または低に分類

≪影響度:S 緊急度:高のリスク≫

<海外展開/地政学に関するリスク>

主なリスク

ファンケルグループは、中国をはじめとするアジア市場を海外事業の重要地域として事業展開を行っております。特に米中間の貿易摩擦や日中関係などの地政学的な問題が発生した場合には、海外事業に大きな影響が発生し、ファンケルグループの業績に影響を与える可能性があります。
また、「VISION2030」の実現に向け、グローバル化を本格化させるために在外子会社の重要性が高まる中で、統治が十分に機能せず、各種海外法令への違反が起きたり、本社の事前承認のない決定などによる損失が発生した場合には、ファンケルグループの業績に影響を与える可能性があります。

主な対策

ファンケルグループは、地政学的な問題が発生した場合にもファンケルグループの製品を選択していただけるブランド価値の確立を目指しております。また、現時点では中国が主な海外市場となっておりますが、今後グローバル化を推進する中で、中国以外のアジア、欧米での展開を強化し、各地域の売上バランスを最適化することで、地政学リスクの低減を図ります。
さらに、在外子会社のガバナンス体制強化のため各種規程や決裁基準の整備を行っているほか、業績・財務情報の適時的確なレポートラインの体制整備をしております。

<法的規制/コンプライアンスに関するリスク>

主なリスク

製品のパッケージなどにかかる表示、および広告などの表示について、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」、化粧品関連事業における「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」、栄養補助食品関連事業における「食品衛生法」「健康増進法」および、通信販売事業などにおける「特定商取引に関する法律」などの各種法令などに違反し、行政庁から指導などを受け、または罰則の適用を受けるリスクがあります。
また、贈収賄、労務、会計および取引管理など事業活動を行う上で適用される国内外の法令などに違反し、罰則の適用を受け、損害賠償などの支払い責任が発生し、または企業としての信用が棄損するリスクがあります。

主な対策

ファンケルグループ内の組織横断的なコンプライアンス体制の構築を目的として、法務を担当する部門・品質保証を担当する部門・その他の部門からなる「グループリスク・コンプライアンス委員会」を設置し、コンプライアンス遵守の状況について監督し、定期的に取締役会へ報告しております。特に事業運営に影響が大きい「景品表示法」「薬機法」については、「グループリスク・コンプライアンス委員会」内に「品質管理部会」を設け、定期的に検討・確認を行い、取締役会へ報告しております。
また、ファンケルグループの従業員がファンケルグループの一員として守るべきルールを明らかにし、従業員が共通認識を持ちながら働くために「ファンケルグループ・コンプライアンス基準」を制定し、従業員に対して、入社以降定期的にコンプライアンス全般に関する教育を実施しております。
さらに「コンプライアンスヘルプライン」を設置し、適切に内部通報を受け付けることで、法令違反の恐れを含む問題の早期発見・解決に努めております。

<製造・品質管理に関するリスク>

主なリスク

ファンケルグループの化粧品および健康食品を塗布・摂取することにより、お客様の体質などによっては、肌や体調に対し悪影響が発生する可能性があり、ファンケルグループの製品の品質に問題があった場合には、商品やブランドイメージが損なわれ、ファンケルグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
品質問題が生じた場合には自主的あるいは薬機法や食品衛生法などの法令に基づく商品の回収や工場の操業停止、製造物責任(PL)法に基づく責務の負担などによりファンケルグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

ファンケルグループでは、化粧品、栄養補助食品、発芽米および青汁について、それぞれ一般的な基準よりも厳しい独自の品質基準を設けて評価しております。
製造においては、ISOおよびGMP(GoodManufacturing Practice)の仕組みを取り入れ、①人為的なミスの防止、②菌汚染、異物混入の防止、③一定の品質のものが安定して作られる工程の確立を目的とした厳格な製造管理および品質管理の実施と、適切な製造設備の構築と維持管理により、製品の品質と安全性の確保を図っております。また、製品の品質向上のために、品質保証を担当する部門が品質に関する会議を行って関係部門と品質管理状況の確認を行うとともに、工場への立ち入り検査などを実施し、品質の維持に努めております。
健康食品摂取におけるお客様からの健康影響の声については第三者専門スタッフによる評価を行い、迅速・適切な対応を行う仕組みを構築・運用し、リスク低減を行っております。
さらに、お客様の声集約システムによる関係部門間の情報共有、情報の有効活用により、より良い製品・サービスの開発、改善に取り組んでおります。

<個人情報/情報管理/システム障害に関するリスク>

主なリスク

ファンケルグループがランサムウェアなどの標的型攻撃による身代金要求などの犯罪の被害者になるケースや、暗号化やデータロックによる事業停止などのリスクが想定されます。
また、サイバー攻撃、内部不正による情報持ち出しなどによって機密情報・個人情報が漏洩・拡散し、社会およびお客様からの信用失墜による売上の減少やお客様などに対する損害賠償責任による損失が発生するリスクがあります。

主な対策

ファンケルグループでは、「グループリスク・コンプライアンス委員会」内に「情報セキュリティ部会」を設置し、ITセキュリティ対策の強化を実施しております。また、ファンケルグループで共通となる「情報セキュリティポリシー」を制定し、それに基づく活動を遂行しております。
具体的には、パソコン全台へのEDRツールの導入によるふるまい検知など、24時間365日の監視体制で検知を強化しております。またウイルス感染予防に向けた全従業員の標的型攻撃メール訓練を定期的に実施するとともに、ホワイトハッカーによるペネトレーションテストを定期的に実施しております。さらに定期的な従業員教育やセキュリティ情報サイトの公開による啓発などの対策を講じております。
また、個人情報管理については、関係法令、公益社団法人日本通信販売協会が定める「通信販売等を中心とした顧客情報に関する個人情報保護指針」および社内規程を遵守するとともに、法務を担当する部門および情報セキュリティを担当する部門の連携のもと、情報管理体制の強化と従業員教育の徹底に取り組んでおります。

<自然災害・事故に関するリスク>

主なリスク

大地震や気候変動に伴う風水害の発生など、自然災害の発生頻度が昨今高まっております。
自然災害が発生し、ファンケルグループの本社、工場、物流センターが罹災することにより業務遂行に困難をきたした場合には、ファンケルグループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、発芽米および青汁につきましては、原料である米やケールの収穫量は天候に左右される性格のものであり、天候不順により原料の不足、価格の高騰があった場合には、ファンケルグループの業績に影響を与える可能性があります。

主な対策

ファンケルグループでは、大地震などの自然災害だけでなく、オールハザード型の事業継続計画を策定しております。
さらに、災害に備えた従業員の安否確認システムの運用、非常食や飲料水の備蓄や有事を想定した定期訓練により、その実効性を高めております。
本社機能は、事業継続に必要な中核システムのサーバーの免震化など災害対策を進めるとともに、従業員が在宅勤務できる体制を整備しております。
調達機能は、主要製品の原料・資材について製造・在庫場所を把握し、仕入先の分散や希少原料の在庫保管などによりリスクの低減を図っております。また、天候に左右される米やケールについては、生産地の分散化や原料の備蓄に努めております。
工場機能は、ファンケルグループでは化粧品、栄養補助食品および発芽米の製造を国内6ヶ所の直営工場などで行い、青汁の製造は関連会社などに委託しております。外部委託を含め、複数拠点での生産体制を構築することにより、リスクの低減を図っております。
物流機能は、物流センターを関東・関西に設置し、リスクの分散を図っております。

≪影響度:S 緊急度:低のリスク≫

<競合/消費者行動・生活者の価値観変化に関するリスク>

主なリスク

ファンケルグループは、美と健康を事業領域として展開しております。近年は敏感肌の女性の増加や健康志向の高まりから、敏感肌用化粧品や栄養補助食品の市場への新規参入が増加する傾向にあります。
消費者の美と健康に関する価値観やニーズ、購買行動の変化などへの対応が不十分で、競合企業の新製品の登場などにより当社製品の競争力が相対的に低下するような場合には、ファンケルグループの成長力と収益性が低下する可能性があります。

主な対策

ファンケルグループは、創業以来、「『不』のつく事柄を解消する仕組みづくり」を経営の基本方針とし、無添加化粧品、栄養補助食品、発芽米および青汁事業などを展開しております。製品開発においても、商品企画開発を担当する部門がこの経営方針に基づき、お客様のニーズや市場調査などを基にして製品の企画開発を進めております。また、さらなる世の中のニーズに対応するための新規事業の創出を目的に新規事業専任の担当役員の設置や専門部門を新設し対応を進めております。
世の中やお客様の『不』が何かを追求する姿勢を堅持し、より発展していくことが、消費者行動の変化に迅速に対応し競争力を維持することにつながっております。
消費者行動の変化に対しても直営の通信販売、店舗販売を始め、ネットモール販売の小売店への卸販売など様々なマルチチャネルを国内外で有しており多角的な対応が可能となっております。

<気候変動/環境問題に関するリスク>

主なリスク

気候変動が事業に及ぼす影響は、TCFDの枠組みに沿って、「第2 事業の状況2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動への取組」にリスクを記載しております。
主なリスクとして、温暖化や異常気象による水害リスク、農産物由来の原材料の生産量減少や品質低下などの原料調達リスク、CO2排出量削減、プラスチック削減や資源循環の政策や規制強化によるリスク、消費者ニーズの変化や投資家の評判の変動などを想定しております。

主な対策

2018年に「ファンケルグループサステナブル宣言~未来を希望に~」を策定し、国際的な目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」と足並みをそろえて、持続可能な社会の実現に貢献していく意思を表明しました。中期経営計画「前進2023」において、サステナビリティの重点課題を設定し、環境への配慮に関しては、CO2排出量削減、プラスチック使用量の削減、持続可能なパーム油の調達について、定量目標を定めてファンケルグループ全体で推進しております。
これらのリスクおよび対策について、取締役執行役員、執行役員で構成される「サステナビリティ委員会」で進捗管理、評価、個別施策の審議を行い、取締役会が監督およびモニタリング機能を果たすことにより、サステナビリティの重点課題目標達成と企業価値向上を目指しております。

<感染症に関するリスク>

主なリスク

感染症の流行が急速に拡大し、パンデミックが発生した場合、ファンケルグループの事業所の操業停止や直営店舗の休業発生の可能性があり、ファンケルグループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

主な対策

ファンケルグループは、事業継続計画に基づき、複数の製造・物流・電話窓口拠点を有しており、特定の事業所において感染症が発生した場合にも事業継続が可能な体制を構築しております。
また、本社部門および電話窓口部門においては在宅勤務が可能な環境を整備しており、感染症流行時に本社に出社しなくても業務遂行が可能となっております。
直営店舗の休業に対しては、ファンケルグループが持つマルチチャネルの強みを発揮し、通信販売への誘導を図るなど、ファンケルグループ全体で影響を軽減できる体制を構築しております。

≪影響度:A 緊急度:高のリスク≫

<風評被害/レピュテーションに関するリスク>

主なリスク

品質問題、コンプライアンス上の問題に加え、SNS上の投稿が活発化する中で、当社公式SNSアカウントのSNS上での投稿、もしくは当社の活動・従業員などの言動が、真偽および意図に関わらず社会的に批判され、SNSなどで拡散することで当社およびブランドのイメージが棄損するリスクがあります。
また、模倣品の流通により、当社製品の本来の品質に満たない製品を当社製品として消費者が購入することで、当社およびブランドへのイメージが棄損するリスクがあります。

主な対策

品質問題、コンプライアンス上の問題から生じるリスクへの対策は、<法的規制/コンプライアンスに関するリスク>および<製造・品質管理に関するリスク>にて記載のとおりです。
ファンケルグループでは、公式SNS運用のためのガイドライン、ならびにいわゆる「炎上」およびその恐れがある場合についての危機管理対応マニュアルを策定し、社内に周知するとともに、当該ガイドラインおよびマニュアルを元に公式SNS運営担当者などへの教育を定期的に行っております。
模倣品については、行政機関と連携の上で疑義品の輸入差し止めなどを行うとともに、特に海外のECサイト上での疑義品について定期的な調査を行い、模倣品販売店舗および工場の摘発へ向けた対応を行っております。

<原材料調達/取引先に関するリスク>

主なリスク

世界景気、地政学的リスク、需給バランス、異常気象および為替の変動などの影響により、製品に使用する原材料の価格が高騰し、または特定サプライヤーへの依存およびサプライヤーのトラブルなどにより原材料が安定調達できないリスクがあります。
また、昨今社会的に要請される、地球温暖化防止、生物多様性保全などの環境側面などへの配慮、およびサプライヤーの労働環境や人権にも配慮した持続可能な調達を実現する責任を果たせず、当社および当社ブランドの信用が低下するリスクがあります。

主な対策

ファンケルグループは、原材料価格の上昇に対して、原価低減や前倒し購入などを行い、その影響の低減を図っております。また、マルチサプライヤー(複数購買化)・マルチハブ(複数製造拠点)・物流2拠点への切り替えを積極的に行い、さらに、栄養補助食品に使用している天然原料については、サプライヤーとの年間契約により、安定調達に関するリスクの低減を図っております。
加えて、毎年、取引先評価および取引先への依存度の確認を実施・評価し、サプライヤーの見直しを実施するとともに、リードタイムと製造キャパシティの調査を実施し、サプライヤーの状況を確認しております。
一方、持続可能で責任ある調達の実践に向けては、サプライヤーへ当社の定める基準である「お取引先様ガイドライン」の遵守状況を確認するアンケートおよびヒアリングを実施し、状況を確認したうえで取引をしております。また、<気候変動/環境問題に関するリスク>記載の定量目標の達成に向け、原料については持続可能なパーム油(マスバランス)の積極的な調達を進め、資材については、FSC認証紙の積極的な採用とプラケースから化粧箱への変更、ボトルについてはケミカルリサイクル品への変更を進めるなど、環境側面に配慮した調達の実現に努めております。

≪影響度:A 緊急度:低のリスク≫

<為替変動に関するリスク>

主なリスク

ファンケルグループは、在外子会社を通して海外で事業を展開しており、外国通貨建ての取引において為替変動の影響を受けます。
また、連結決算において在外連結子会社の財務諸表を円換算する際にも為替変動の影響を受けます。
為替変動が想定を上回った場合には、ファンケルグループの財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

ファンケルグループは、取引に使用している主要通貨の為替変動を監視し、例えば適切な為替予約などを付すことにより、迅速に為替変動に対応できる体制を整備しております。

<優秀な人材の確保と育成に関するリスク>

主なリスク

日本においては少子高齢化により、今後、労働人口はますます減少することが想定されます。同時にIT技術の進展やグローバル化、働き方改革などにより雇用環境も大きく変わりつつあります。
ファンケルグループは「VISION2030」の実現に向け、各分野で活躍できる多様で優秀な人材の確保が必要となります。採用環境の変化により人材の確保が計画的に進まない場合や、確保した人材の育成が不十分な場合など、人材が不足する場合には事業活動が停滞する可能性があり、ファンケルグループの経営成績に影響を与える可能性があります。

主な対策

ファンケルグループでは、「みんな違ってあたりまえ」というスローガンをもとに、ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営に積極的に取り組み、多様な従業員が美しく健やかにパフォーマンス発揮ができる、働きやすい環境づくりを進めております。
また、従業員教育を専門的に行う部門を設置し、従業員教育のための人材投資を大幅に増加させることで、体系的な人材育成を行い、将来の事業展開の拡大に応じた人材の確保に努めております。
さらにファンケルグループでは、2017年4月に定年年齢の定めがない「アクティブシニア社員」という新しい雇用区分を新設しております。優秀な人材を雇用し続けることにより労働力の確保につながるほか、企業理念やスキルの継承、後進の育成により、人材力の向上に寄与することを目的としております。
これらの取り組みに加えて、持続的な成長を支える人的資本経営について、取締役会で議論し、経営戦略を実現するための人材戦略の策定と実行を進めております。詳細は「第2 事業の状況2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本への取組」に記載しております。